カンナビスはスキンケアやメイク、ボディーケアなどさまざまな製品に配合
カンナビス(大麻)がカリフォルニアやマサチューセッツ一部の州で合法化されてから、アメリカでは賛否両論はありつつもその効用について注目が高まっている。研究も増え、2017年は前年に比べ約2倍の投資がカンナビス関連のスタートアップ企業にされたという。その用途はビューティ業界にまで広がり、ここ最近アメリカではカンナビス入りの化粧品が増えている。そして今まではタブーとされ、そのためニッチなブランドしか取り扱っていなかったものの、「ミルク メイクアップ(MILK MAKEUP)」や「ハイ ビューティ(HIGH BEAUTY)」などセフォラ(SEPHORA)が扱うブランドもカンナビス入りの製品を発売するようになった。
化粧品のコンサルティングもするゲイツ クリエイティブ(Gates Creative)のシシリア・ゲイツ(Cecilia Gates)最高経営責任者は「カンナビスは少し前までは違法なものとして捉えられ、危険なイメージがあった。そのため、カンナビス入りの化粧品に手を出す人もなかなかいなかった。しかし最近はヒッピーしか使わないニッチな化粧品のイメージから、植物性のウエルネスアイテムとしての認知が高まっている」と話す。近年ナチュラル系の化粧品やクリスタルを使ったヒーリング効果のある化粧品、サプリメント、瞑想など、ウエルネスに関連した美容法はアメリカでも人気があり、カンナビス入りの化粧品もその中に含まれている。
クッシュクイーン「シールド フォー イミュニティー バスボム」(19.99ドル、約2000円)
カンナビスビューティブランドで最近話題の「クッシュクイーン(KUSH QUEEN)」(「クッシュ」は大麻の種類。大麻を意味するスラングとしても使用される)のオリビア・アレクサンダー(Olivia Alexander)創業者は「昨年あたりからタブーが少しずつ薄れ、一般の人にも認められるようになってきた」と振り返る。「クッシュクイーン」はCBD(カンナビジオール)オイルを配合したバスボムや美容液、ローション、シャワージェル、セクシャルアメニティー、アクセサリーなどを多くそろえる。CBDオイルは大麻草の芽と花から抽出したオイルで、痛みを緩和する作用や、不安症の治療も期待できるという。薬物摂取のようにハイになることはなく、リラックス効果がある。「クッシュクイーン」の製品は、説によると依存性などが懸念される大麻の有効成分、THC(テトラヒドロカンナビノール)を一切含んでいない。店舗はロサンゼルスに1店舗とECショップを構え、ECは入るときに18歳以上か年齢を聞かれる仕組みになっている。「それでも消費者にきちんと教育することが大事。CBD入りの化粧品の効果や安全性、また市場に出回っている他成分と差についてはしっかり説明している」。専門家も、今話題のクールな成分としてではなく、きちんとウエルネスにひもづく成分として解説することが、今後も継続して使用されるかぎになると分析する。
READ MORE 1 / 1 バーニーズなど高級販路にも
ハイビューティ「ハイ エクスペクテーションズ フェイシャル オイル」(54ドル、約6000円)
セフォラも9月にカンナビスビューティブランド「ハイビューティ」の取り扱いを開始し、CBD関連製品を押している。同ブランドは、ヘンプシードオイルを配合するカンナビスフェイスオイルや乳液などをそろえている。創業者のメリッサ・ジョチム(Melissa Jochim)は「セフォラは今の消費者が求めているものを細かく分析しており、今回協業することになった。ウエルネスとひもづくまでは、一般の人には全く受け入れられなかった。われわれの製品は、鎮痛効果よりも肌に効果があるものを作りたかったため、また、全国のセフォラで売りたかったため、一部の州でしか合法化されていないCBDやTHCを一切配合していない。今は新しいものを挑戦したい若い人と、効果のあるものを求めるよりマチュアな顧客の2つに分かれている。19年には新たに9製品を発売する予定だ」と話す。セフォラで人気で、ミレニアル世代をターゲットにしたブランド「ミルク メイクアップ」も今年に入って「クッシュライン」をローンチした。4月にカンナビスオイル配合のマスカラ、6月にアイブロウジェルを発売。毛に負担をかけずに、まつげやまゆげに繊維をプラスする製品だ。
ボディーバイブス「フラワー パワー」(60ドル、約6000円)
バーニーズ ニューヨーク(BARNEY'S NEW YORK)もカンナビスのトレンドに乗っている。「バイオエナジーテクノロジー」と呼ぶ技術を用い、さまざまな周波を真似るシールを手掛ける「ボディーバイブス(BODY VIBES)」を扱い始めた。中でもカンナビノイドの周波を出すというシール「フラワーパワー」は10枚で60ドル(約6000円)で販売し、心臓の近くに貼ると最大72時間、リラックス効果が期待できるという。共同創設者のマディソン・ドゥ・クラーク(Madison De Clercq)は「CBDシールは、ハイになることはなく、ヒーリングやリラックス効果が期待できる。人間の体にはカンナビノイド受容体があり、シールを貼ることによってその受容体を刺激し、緊張を和らげる」と説明した。
ミュラド「リバイタリクシール リカバリー セラム」(89ドル、約9000円)
ユニリーバ(UNILEVER)傘下のドクターズスキンケアブランド「ミュラド(MURAD)」のハワード・ミュラド(Howard Murad)医師は「医療では、大麻への注目は高まるばかりだ。少しずつ一般社会にも浸透していると感じる」と話す。同ブランドはヘンプシードオイル配合の美容液(89ドル、約9000円)を販売し、肌全体にかかるストレスにアプローチする。「私はウエルネスの面でとてもポテンシャルのある成分だと思っている。肌だけではなく、精神面にも働きかけられる成分なのだ」。ミランダ・カー(Miranda Kerr)などトップモデルを顧客にもつエステティシャンのイルディ・ペカール(Ildi Pekar)もマンハッタンにあるサロンで自身のCBDラインを販売している。スリーピングマスクと美容液を扱い、今秋は生理痛を緩和する効果が期待できるCBD配合のマッサージローラーを発売予定だ。「最初は戸惑われる人が多いが、きちんと効果について説明すると、理解してもらえる」。
8月に開催されたビューティエキスポでは、参加したブランドのうち、昨年の3社に比べ約5倍の14社がCBDもしくはカンナビス関連のブランドだった。アークビュー(ARCVIEW)とBDSアナリティクス(BDS ANALYTICS)の調査によると、2022年までにグローバルな合法カンナビス市場は約3倍に膨らみ、320億ドル(約4兆円)になると予測される。今後研究が進むに連れ、新たな有効成分としてカンナビス関連の化粧品がさらに増えそうだ。