今シーズンもグランパレを会場に、暗く照明を落としたランウェイを用意した「サンローラン(SAINT LAURENT)」。エディ・スリマンが好む、シャープでロックなスタイルは変わらない。インビテーションには、線だけで構成したグラフィック。同じイメージは、演出や服のデザインにも展開された。
ショーの始まりと同時に、頭上にセットした巨大なライトが広がり、暗い空間一杯にグラフィカルな照明を灯す。ロックがガンガン鳴り響く中で見せたのは、メンズコレクション同様、ティディ・ボーイやモッズのイメージを色濃くしたスタイル。エディの気分はLAからロンドンへ移っているようだ。
低めのキトゥンヒールで速足でカツカツと歩くモデルが着るのは、マイクロミニのレザーやグリッターのドレスとジャケットの組み合わせだ。時々差し込む強い色使いや幅3センチはあるパワーショルダーからは80sの匂いもする。プリントやスパンコール刺繍で取り入れたセクシーなリップや炎はムッシュ・サンローランが愛したモチーフだ。
3シーズン目にして基本的に変わらないロックでスリークな世界観や、ハイウエストスカートの限界に近い丈の短さ、そこから受け取るエディの"若さ"への称賛の姿勢に食傷気味な業界人が多いのは事実。しかし、前向きにとらえるなら、そのエッジィなスタイルの中で、エディは自分がメゾンの中でやるべきことを明確にしている。今回で言えばそれは、メゾンのシグニチャーでもあるスモッキングやジャケットの再解釈。実に豊富なバリエーションを提案している。
ネイビーから黒にかけてのダークなジャケットは一点一点異なるアイデアが注がれている。ボタンがなくカーディガン感覚でさらりと羽織るエフォートレスなデザインが多いが、前を留めずとも構築的なシルエットが生まれるように計算がされている。マイクロ丈のスモッキングや、アームホールを広くとり袖をばっさりと切り落としたベスト感覚のレザージャケット、三角形のフォルムを前立てに取り入れたクロップド・ジャケットなど。レザーのピークドラペルで切り替えた千鳥格子のロングジャケットやレザーの細身のネクタイを合わせる総スパンコールのジャケットなど、2つとして同じパターンはない。テーラードの再構築がひとつのテーマとなっている今シーズンのパリを象徴するコレクションと言えるだろう。