ステュディオスが6月1日付で、トウキョウベースに社名変更した。「東京を拠点に、地に足をつけて世界に発信していく」という思いを込めたもの。全身「ステュディオス」の商品を着用した一般株主なども訪れたという定時株主総会の直後に、谷正人CEOを直撃し、このタイミングでの社名変更と、最近立ち上げた新業態の進捗状況、今後の成長戦略を聞いた。
昨年9月2日に東証マザーズに上場したステュディオスだが、「セレクトショップの『ステュディオス』に続き、オリジナルで構成するSPA業態の『ユナイテッド トウキョウ』も一つの事業として成功してきた。第3、第4の新業態の開発や、有力ブランドのM&Aなどを見据えて、このタイミングで社名を変更した」と谷CEO。「メード・イン・ジャパンを含めて、東京のファッションを世界に発信していきたいから、“東京”を頭に付けることにこだわった」と明かす。
昨年3月にスタートした「ユナイテッド トウキョウ(UNITED TOKYO)」は、長期的には300億円規模を目指すSPA型業態だ。「新規事業として成功させるだけでなく、『ステュディオス(STUDIOUS)』以外の事業をうちで成功させられるのかという、2つの大きな意味を持っていた。売上高は9億6000万円と目標を超え、初年度からしっかり黒字化した。合格かなと思っている」と語る。なぜ成功できたのか?「業界ウケを狙わずに、徹底的にエンドユーザーに満足してもらうことを目指したことが要因だ。キャットストリートや表参道などに路面店を出したいという気持ちもあるが、ぐっとこらえ、表層的なウケは狙わず、圧倒的に原価率を高めてお客さまへの還元を一番に考えている」という。広告は一切打たず、商品原価率は50%以上に設定。在庫コントロールにも力を入れた。
全てメード・イン・ジャパンであることもウリの一つだ。だが、「日本製だから買ってもらえるわけではない。お客さまは、スタイリッシュだったり、着心地が良いことに興味持った上で、結果的に日本製のモノを支持する。この1年は、口コミで良さが広まり、事業を0から1にする作業は成功だった。さらに1から10にするために、新たな施策も考えていく」。現在は6店舗だが、「毎年1〜2店舗ずつ好立地で適正家賃の場所に出店し、国内で最大36店舗ほどに増やしたい。将来的には海外やECを含めて、事業を成長させていきたい」。さらに今春にはウィメンズのハイエンド業態「ステュディオスシティ」をスタートした。3月25日に新宿ニュウマン、4月1日に名古屋ラシックに出店。「『ユナイテッド トウキョウ』ほど大きな成功要素は見えていないが、立ち上がりは順調だ。新たな客層を取り込んでいる」。秋には大阪に3号店を出店予定だ。
若手スタッフをリーダーに派生業態続々
派生業態も続々とスタートしている。“トウキョウハイストリート”をコンセプトにした「ステュディオス3rd」を4月29日、神宮前に開いた。入社3年目のスタッフがバイイングを手掛け、モードやシンプルをベースに「ワコマリア」や「ミスター・ジェントルマン」など、全てセレクトブランドを取り扱う。さらに同店2階には古着を扱う「ステュディオス ユーズド」をオープン。入社1年目のスタッフを事業リーダーに抜擢し、チャレンジの場を与えている。「東京ブランドのユーズド商品を買い付けて、ポイントで還元。金銭的にオリジナル商品しか購入する余裕のない顧客に向けて、将来的な顧客化のきっかけを作る」という。
成長戦略の柱の一つであるEC事業については、自社ECに「ステュディオス」と「ユナイテッド トウキョウ」、ゾゾタウンに同2業態と「ステュディオスセレクト」を構える。EC比率は31%で、うち、8割をゾゾタウンが占める。自社ECへの移行を図る企業も多いが、「それぞれ役割が異なる。『ゾゾタウン』で集客し、リピーターになり、自社ECや店舗にも足を運んでくれるようになれば」と話す。本社移転に伴い、外注していたプレスルーム機能を内製化。撮影スタジオも完備し、ECとの連携を深める。
今秋には、越境ECをスタートする。「グローバルに東京の情報を伝えていく、メディア型のECサイトを構築中だ」。海外へのリアル店舗での進出にもチャレンジする。ここ数年、「香港は景気低迷で、家賃が下がっている。今秋冬、大幅に家賃が下がれば出店したいが、冷静にタイミングを待ちたい」。
既存の「ステュディオス」業態については、セレクトブランドが好調だが、「ユナイテッド トウキョウ」のローンチ3カ月は、「ステュディオス」のメンズオリジナルが不調だったという。「ユナイテッド トウキョウ」の店舗オープンに際し、「ステュディオス」の優秀な店長を異動させ、トップのメンズ企画スタッフも配属。「振り切りすぎたことで『ステュディオス』の顧客を取ってしまった(笑)。だが、セレクトする日本ブランドのMDの精度を磨くきっかけになった。ブランドの特性に合わせた能動的な売り上げの作りかたに変化した」。メンズでは、「ファクトタム」「ジョンローレンスサリバン」「N.ハリウッド」「シャリーフ」「ネイム」など、ウィメンズでは、「タロウホリウチ」「クラネ」などの売り上げが好調だ。
メンズのハイエンドラインとして14年に渋谷区神南にオープンした「ステュディオス トウキョウ」は、梅田イーマに2店舗目を出店。「ジュンヤワタナベ」や「ソフ」「ホワイトマウンテニアリング」など、世界で活躍する東京ブランドを集積。感度の高い20代後半の顧客を中心に、ファン層を広げたい考え。3月に渋谷から移転した表参道のアライブ美竹ビルは、全盛期のサンエー・インターナショナルやマッシュスタイルラボなどが入居していた“出世ビル”でもある。「原宿オフィスからスタートし、ビジネス色を強めるためにIT企業が集まる道玄坂に移転。次はファッション色を強めていく。日々の通勤の中で、スタッフにトレンドや道行く人の着こなしを肌で感じてほしい」と語る。16年度2月期の売上高は60億8000万円。今期は80億6000万円を見込む。