9月6~8日にミラノで開催されたファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ」が打ち出したテーマは3つ。各テーマで世界的な美術家や建築家を対比させることで、相反するカラーやテクニックが一つのテキスタイルやスタイルに混在する、今のファッションの流れを表現した。コンセプトや会場内のインスタレーションをディレクションしたステファノ・ファッダ=「ミラノ・ウニカ」トレンド委員長のコメントとともに3つのテーマを説明する。
ルーチョ・フォンタナと葛飾北斎
ルーチョ・フォンタナはキャンバスをタテに切り裂いた作品で知られるイタリアを代表する美術家・建築家。葛飾北斎の浮世絵で見られるような抽象と具象の中間に位置するようなモチーフと、シンプルな直線の組み合わせが生み出す、“線のデザイン”が大きな特徴になる。「重要なカラーであるブラック&ホワイトをベースに、シンプルだが洗練された線で構成されるジャカード柄やプリント柄が台頭する」という。
アルベルト・ブッリとレンツォ・ピアノ
アルベルト・ブッリは、ルーチョ・フォンタナと並ぶイタリアを代表する美術家で、キャンバスにボロ布を貼り付けたり、ガーゼや布のコラージュ作品などで知られる。一方、レンツォ・ピアノはイタリアを代表する建築家で、パリのポンピドゥー・センター、銀座の「メゾンエルメス」、関西空港などを手がけ、エンジニアリング技術と構造設計を融合して生まれる、現代的で直線的なデザインが織りなす立体的な構造デザインが特徴。「使い古した古着のようなブラウンのカラーに、異素材をコラージュしたようなジャカードや服飾資材を組み合わせたり、無地でも立体的でインダストリアルなテキスタイル構造にあえて古びたアクセサリーを組み合わせたスタイルが、このテーマの特徴だ」。
ウォルター・アルビニ(WALTER ALBINI)とピエロ・ポルタルッピ(PIERO PORTALUPPI)
ウォルター・アルビニはイタリアのファッションデザイナーで1970年代に活躍。ピエロ・ポルタルッピはイタリアの建築家で、いずれもアメリカの作家スコット・フィッツジェラルドの小説に出てくるような1950~70年代クラシックなスタイルやモチーフが特徴。テキスタイルもクラシックなモチーフを現代にアレンジしたものになる。「クラシックなモチーフを多用しながらも、実は新しいテクノロジーを駆使したからこそ実現できるものも多くある。昔の壁紙のようなクラシックな柄を、合繊のミニマルなジャカードで表現したり、メンズのオーセンティックなチェックや千鳥格子柄を、先染めではなくあえてインクジェットプリントする、といった感じだ」。