4月に開催されたミラノサローネ国際家具見本市は、過去最高の来場者数を記録した。ミラノ市内では同時期にインテリア業界だけでなく、ファッションをはじめ異業種がイベントなどを行い、年々盛り上がりを見せている。日本でも、住空間への消費者の関心が高まっており、さまざまな提案が見られる昨今。家具から雑貨まで幅広く取り扱う百貨店では、ミラノサローネからどのようなヒントを得て、売り場に反映しているのだろう。三越伊勢丹の服部由布子リビング統括部リビング第二商品部インテリア1バイヤーに話を聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):ミラノサローネはイベントとして年々拡大しているようだが、それに関してどう思うか?
服部由布子バイヤー(以下、服部):イタリアが誇る展覧会ということで気合いが感じられ、活気にあふれていた。ビジネスだけでなく、学生らの学びの場にもなりうる。街の至るところで催し物が行われ、地元に根付き人々に愛されているイベントだと実感した。
WWD:今年のミラノサローネの全体的なムードや傾向は?
服部:シーンではなく、アイテムにフォーカスしたモノ寄りの見せ方が多かった。「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」や「アルテック(ARTEK)」は道具やパーツを用いて、クラフツマンシップにフォーカスした展示が印象に残った。デザイナーの切り口では、「マジス(MAGIS)」や「カルテル(KARTELL)」など。グリーンを多用したアウトドアの展示も多かった。
WWD:注目のブランドは?
服部:「カッシーナ(CASSINA)」はアイキャッチなアイテムが多く、いち早く紹介したいと思った。デザインを前面に出してアピールしたい。「モーイ(MOOOI)」もデザイン性が高く、特にデジタルプリントを駆使したカーペットは素敵だった。職人技をエレガントかつモダンに表現した「トーネット(THONET)」も印象に残った。催事などで紹介したいブランドの一つだ。
WWD:今年のミラノサローネから得た売り場で生かせるヒントやアイデアは?
服部:伊勢丹新宿店のお客様は特に、コーディネート力のある方が多いので、家具にフォーカスし、その背景を伝えられるような見せ方をしてみたい。アウトドア家具に関しては、グリーンや食器などをコーディネートし、シーン作りをしている。来年夏には、グランピングを意識したゴージャスなアウトドア空間の提案をするつもりだ。
WWD:今後の売り場展開の予定は?
服部:伊勢丹新宿店の常設売り場は昨年リニューアルし、ラグジュアリーにフォーカスしている。これら常設ブランドに関してはモノづくりの背景を伝えていきたい。30~40代の顧客に向けては、プロモーションスペースの「パーク」などで、デザインに特化したアクセントになる家具も提案していくつもりだ。イタリアウイークに合わせ9月21日~10月4日、ポップでデザイン性の高いイタリア発「ボナルド(BONARDO)」のポップアップコーナーを開設する。
WWD:今後の課題は?
服部:ブランドの本質を伝えることと、百貨店ならではのコーディネート提案。どのようにお客様に商品力とその価値を伝えるかは、百貨店が持つ接客のノウハウに問われると思う。