「ヴェトモン」でファッション業界に大旋風を起こし、「バレンシアガ」のクリエイティブ・ディレクターに抜擢されたデムナ・ヴァザリアの故郷、ジョージア(旧グルジア)を知っていますか?
デムナを筆頭にロシアのゴーシャ・ラブチンスキーなど旧ソビエト連邦出身のデザイナーが頭角を現し、今、旧ソ連の国々に注目が集まっています。とはいえ、どんなところかと調べようとしても、日本で情報を得るのがまだまだ難しく、どうしたものかと頭を抱えていたら、ジョージアの首都・トビリシでメルセデスベンツが冠スポンサーのファッション・ウイークが11月3〜7日まで開催されると聞き、訪れることにしました。
ジョージアは、北にロシア、東にアゼルバイジャン、その先にカスピ海、南にトルコやアルメニア、西は黒海に面した小さな国です。1991年に旧ソ連から独立。ちなみ旧ソ連の最高指導者のヨシフ・スターリンの出身地でもあります。面積は6万7900平方メートル、人口は、約370万人(2014年)。日本からの直行便はなく、イスタンブール、モスクワ、ミュンヘンのいずれかで乗り換えます。昨年から旅行で訪れる程度の滞在ではビザは必要なくなり、通貨は、ジョージアラリGEL(1GEL=約50円)。レア通貨のため、日本で換金できず現地で換金しました。物価は、タクシーの初乗りが3GEL(約150円)、レストランで500mlの水を頼むと3 GEL(約150円)、コーヒーが6GEL(約300円)ワイン1杯が8 GEL(約400円)という感じで、安いです。言語はグルジア語。若者は英語が話せますが、タクシーの運転手のおじさんは話せません。
古くはシルクロードの通り道の芸術大国
首都トビリシは、シルクロードの通り道にあったため、多様な文化が入り交じっています。古くから栄えた街だけに、芸術の分野で優秀な人材を輩出しています。ピアニストやバイオリニスト、オペラ歌手など世界で10本の指に入るようなハイレベルの方々がいらっしゃいます。映画監督のオタール・イオセリアもジョージア出身です。ちなみに、ファッションの歴史をさかのぼると1860年代にトビリシに織物工場ができました。
宗教はキリスト教が主流で、イスラム教を信仰されている方もいます。なので、旧市市街を歩いているとアルメニアン教会のすぐそばにモスクがあったりします。外務省の危険情報では、ロシア国境近くは危険度レベル4(最危険レベル4)、首都のトビリシはレベル1。デムナの出身地は地図でいうと右上の方で、ジョージアからの独立を求めているエリアでレベル4。彼がアントワープ王立美術学院に入学する前に、家族でドイツ・ドュッセルドルフに移住しています。
日本人にとってあまり馴染みがない国だけに少々不安でしたが、実際に行ってみるととても穏やか。みんな温かくて優しいです。もともと土地柄、侵攻されやすく、波瀾万丈の歴史があり、さらに、旧ソ連崩壊から劇的に変わったわけで、貧富の差が激しい印象でした。近代的な建物の裏にぼろぼろの住居があったり、ピカピカのメルセデスベンツの後ろの住居が、旧ソ連時代に建てられたと思われる集合住宅だったり。タクシーも「プリウス」が走っていたかと思えば、旧ソ連時代、政府専用車だった車がタクシーとして使われていたりと、何でもアリ?なミックス感が新鮮です。開発は絶賛進行中で、ぼろぼろだった外壁を塗り替えてストリート全体をキレイにしたり、モダンなデザインのコンサートホールを建設していたりと街の顔が徐々に変わっている感じがしました。地下鉄もあります。ショップは「ザラ」を筆頭に「ナイキ」や「アディダス」、「ヴェルサーチ」などが目に止まりました。さらに、デザインホテルやレストラン、コンセプトストアなど好感度施設が点在しています。来年はいよいよ「H&M」も上陸、といった具合でさらに変化のスピードは加速しそうです。
デムナがどこかのインタビューで、「誕生日に『マクドナルド』に行くのが最高にクールだったんだぜ」と語っていた「マクドナルド」は、確かに目立っていました。いわゆる私たちがイメージするカジュアルな店構えではなく、黒塗りで「ちょっとした城」的な佇まいで風格さえ漂っていました。道路の脇にも「あと3キロでマクドナルド」、「あと2キロ」といった看板が出ていたり、「マクドナルド」のMをひっくり返したロゴを看板に掲げたパクリ店があるほど。そのほかファストフードは、「サブウエイ」「ウエンディーズ」も目に入りました。「ハードロックカフェ」もありました。とにかく表情豊かな街で、移動中も気を抜けません。古くからさまざまな文化が行き交っていただけに、あらゆる文化を許容しながらも独自の文化を守りながら発展し、ユニークな街ができたのだなあと感じました。そしてそれが今も続いている印象でした。
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