昨年1月にこの世を去ったデヴィッド・ボウイ(DAVID BOWIE)の回顧展「DAVID BOWIE is」が、1月8日〜4月9日まで東京・品川の寺田倉庫で開催される。アジア唯一の開催となる同展は、13年のロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(以下、V&A)を皮切りに、シカゴやパリ、サンパウロなど世界中の都市を巡回し、累計160万人以上を動員。来場者がヘッドフォンを装着し、音楽と共に鑑賞する体験型の催しだ。会場ではボウイ自身のアーカイブを中心に「STARMAN」「FASHION」「JAPAN」「SOUND&VISION」「SPECIAL」の5カテゴリーに分けて厳選された300点以上の資料や衣装が展示される。「SPECIAL」のエリアでは「David Bowie Meets Japan」と題した日本独自企画として、映画「戦場のメリークリスマス」でボウイと共演した坂本龍一と北野武のインタビュー映像も上映される。
ここでは同展の展示衣装を元にジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)やトム フォード(Tom Ford)など数々のデザイナーのミューズにも挙げられたデヴィッド・ボウイのファッション「DAVID BOWIE is “FASHION”」を紐解いていく。
READ MORE 1 / 3 衣装を手掛けた有名デザイナーたちとは?
山本寛斎やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)を筆頭に、ボウイは40年を越える活動の中で、数々のファッション・デザイナーとの協業を果たしてきた。
■山本寛斎
左から「TOKYO POP」と「出火吐暴威」。ともに「アラジン・セイン」ツアーの衣装
親日家でもあったボウイのツアー衣装は、山本寛斎が多数制作したことで知られる。特に「アラジン・セイン」ツアーの衣装である白黒ストライプの袴の形が特徴的なジャンプスーツ「TOKYO POP」とワンショルダーのニットワンピース「出火吐暴威」は有名だ。ちなみに「出火吐暴威」は当て字で“デヴィッド・ボウイ”を指す。
左から「因幡の素兎」と“出火吐暴威”の字があしらわれたマント
また、ボウイが初めて着用した山本寛斎の作品でもある「因幡の素兎」は「ジギー・スターダスト」「アラジン・セイン」の両ツアーで披露された。これは71年にロンドンで発表された“KANSAI IN LONDON”で発表されたもので、ボウイが個人的に購入しステージ衣装に採用された。
■アレキサンダー・マックイーン
ボウイは、アレキサンダー・マックイーンのキャリアの初期から協業していた。ユニオンジャックを大胆に配した97年のアルバム「アースリング」のジャケット写真の衣装は、セントラル・セント・マーチンズを卒業したばかりの当時26歳のマックイーンに依頼した。なお、英ロックバンドのザ・フー(The Who)でボーカルを務めるピート・タウンゼント(Pete Townshend)が着ていたコートからインスパイアしたというこのフロック・コートを、会場ではマックイーンからボウイに宛てた手紙を背景に見ることができる。
■エディ・スリマン
右から2つ目のスーツをエディが手掛けた
02年の「ヒーザン」ツアーのシルクスーツをデザインした「サン ローラン(SAINT LAURENT)」の元クリエイティブ・ディレクターであるエディ・スリマン(Hedi Slimane)もボウイに影響を受けたデザイナーの一人。「ディオール オム(DIOR HOMME)」のアーティスティック・ディレクターを務めていた06-07年秋冬コレクションは、「シン・ホワイト・デューク」に捧げたコレクションだ。少年時代、74年の「ダイアモンドの犬」ツアーでボウイが着用したスーツや映画「地球に落ちて来た男」のビジュアルに感化されたという。女性のようにシャープなフォルムもボウイのファッションを特徴づける。
また、9月には夫を亡くしたモデルのイマン・アブドゥルマジド(Iman Abdulmajid)に対して“David”の綴りのネックレスを送ったことでも知られている。
■フィービー・ファイロ
74年に登場したフレディ・バレッティ(Freddie Burretti)によるからし色のダブルスーツは、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が手がける「セリーヌ(CELINE)」11-12年秋冬コレクションのインスピレーション源にもなった。
■三宅一生
日本を愛したボウイは、70年代に三宅一生のキュロットを普段着でも愛用し、私生活でもジギー・スターダストを演じた。
READ MORE 2 / 3 あのデザイナーもボウイの虜に
「ジギー・スターダスト」や「アラジン・セイン」「シン・ホワイト・デューク」など、ボウイは作品ごとにキャラクターを刷新してその都度新しいビジュアルを発信した。各時代のアイコニックな衣装を網羅する点も同展の魅力だ。
■ファッションを変革したジギー・スターダスト期
72年7月6日に英BBCの人気音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」に出演したボウイは、オレンジ髪とメイクに極彩色のジャンプスーツ姿で「スターマン」を歌唱し、「ジギー・スターダスト」というキャラクターを世に知らしめた。同展では他にも、リバティ社のプリントで制作されたジャンプスーツのレプリカが棺桶に埋葬される形で展示される。
■シン・ホワイト・デューク期以降のドレスアップ
「ジギー・スターダスト」を葬ったボウイはその後、白シャツとベストに黒スラックス姿がアイコニックな「シン・ホワイト・デューク」というキャラクターを演じることになる。同時期の衣装は、ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)のギタリスト・スラッシュ(SLASH)の母親でスタイリストのオーラ・ハドソン(Ola Hudson)がほとんど手がけていた。その後エレガントなスーツスタイルもボウイの語り草のひとつとして定着し、90年にはジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)がブラック&ホワイトのスーツ衣装を手がけた。
■ボウイが開拓したノー・ジェンダー
ボウイは男性ファッションの境界線を積極的に押し広げる存在でもあった。96年のブリット・アワード授賞式では、「ミュグレー(MUGLER)」のオートクチュールスーツに「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」のイヤリングとキャサリン・ハムネット(Katharine Hamnett)がデザインしたキトゥン・ヒールを組み合わせたノー・ジェンダーな装いで登場した。
READ MORE 3 / 3 二階堂ふみが語るボウイの魅力
■二階堂ふみとボウイの出会い
オフィシャルサポーターを務める二階堂ふみは、ウエストのギャザーと刺しゅうデザインがポイントの純白ドレス姿で内覧会に登場した。
「変化を恐れていた16歳の私を『チェンジス』という曲が前向きにしてくれた。この回顧展にも、人生をかけて新しいことに挑戦した男の生き様が詰まっている」と魅力を語った。ファッションについても「肩が極端に広がったクラウス・ノミ(Klaus Nomi)とボウイの衣装や山本寛斎さんの手がけた日本的な衣装を生で見てゾクゾクした」と絶賛。鋤田正義が撮り下ろしたアルバム「ヒーローズ」のジャケット写真のビジュアルでボウイに魅了されたという。
また、内覧会にはGLAYの TAKUROや野宮真貴、栗原類やハリー杉山らも来場したほか、ボウイと縁深いデザイナーの山本寛斎や写真家の鋤田正義、スタイリストの高橋靖子らも駆け付けた
■オフィシャルショップには山本寛斎グッズも
回顧展を見終えると限定グッズが並ぶオフィシャルショップが待ち構える。山本寛斎がデザインしたジャンプスーツ「TOKYO POP」を模したボストンバッグ(12万8000円)とショルダーバッグ(9万8000円)、Tシャツ(2万9000円)も販売中だ。
また、ボウイと親交の深いクリエーターによるトークショー「DAVID BOWIE is ~プレミアム・トークショー~」の開催も決定。出演者は山本寛斎、アルバム「ヒーローズ」のジャケットも撮影したカメラマンの鋤田正義、同じくカメラマンでルー・リード(Lou Reed)をはじめとする70年代のロック・ミュージシャンを撮り続けたことで知られるミック・ロック、日本のスタイリストの第1号で70〜80年代のボウイのスタイリングを手掛けたスタイリストの高橋靖子の4人。ボウイと共に時代を歩み、時間を共有した4人がそれぞれのボウイを紹介する。
■「DAVID BOWIE is」
会期:1月8日(日)~4月9日(日)
時間:火~木・土・日・祝 10:00~20:00(最終入場 19:00)、金 10:00~21:00(最終入場 20:00)
休館日:毎週月曜日(1/9、3/20、27、4/3 は開館)
会場:寺田倉庫 G1ビル
入場料:一般2400円、中学生・高校生、1200円、限定オリジナルグッズ付き前売り券5000円
■「DAVID BOWIE is ~プレミアム・トークショー~」
日時:2月26日(日)、3月5日(日)、3月11日(土)、3月19日(日)
会場:銀座 ソニービル 5F ソニーイノベーションラウンジ
出演者:鋤田正義(2/26)、山本寛斎(3/5)、ミック・ロック(3/11)、高橋靖子(3/19)
入場料:5000円(全席自由席、「DAVID BOWIE is」チケット付き)
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