フランス発「ラ・メゾン・デュ・ショコラ(LA MAISON DU CHOCOLAT)以下、メゾン・デュ・ショコラ」から、新感覚のショコラ“エンジェル(ANGEL)”が登場する。「メゾン・デュ・ショコラ」は今年創業40周年。高級ショコラのパイオニア的ブランドだ。4月に発売予定の”エンジェル“は25年にわたり世界的ベストセラーである「ティエリー ミュグレー(THIERRY MUGLER)」のフレグランス”エンジェル“のトップ・ミドル・ラストノートを表現したものだ。通常ショコラでは使用しない香料パチョリを配合するなど、冒険的なアプローチで制作。発表のために来日した「メゾン・デュ・ショコラ」のショコラティエであるニコラ・クロワゾー(NICOLAS CLOISEAU)に開発にまつわるエピソードやショコラティエの仕事について聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):今回のコラボレーションのきっかけは?
二コラ・クロワゾー(以下、二コラ):飛行機の機内誌で“エンジェル”の調香を手掛けたオリヴィエ・クレスプ(OLIVIER CRESP)の記事を見て、何か一緒にできないかと思った。“エンジェル”は“食べたくなるような女性をイメージした”香り。25年前にフレグランスに”グルマン=食べ物“という新たなジャンルを作った人だからね。帰国してすぐ、マーケティング担当に相談したよ。彼女はフレグランス業界出身で、『彼のような調合師の大御所に会うのは、まず無理』と言われ断念した。
WWD:当初、断念したのに実現したのは?
二コラ:本当に偶然だったよ。それから約半年後に“エンジェル”の販売権を持っていたクラランスから香水の発売25周年でコラボしたいという申し出があったんだ。一旦あきらめた僕の願いが叶ったんだ。
WWD:ショコラの開発はオリヴィエと協業で行ったか?
ニコラ:もちろん。彼は僕のアトリエに来て、ショコラの材料のカカオやクリーム、バターなどの香りを試した。僕も彼のアトリエを訪ねて、調香師の働く現場を見たよ。そしてお互いのやり取りの中で3つのノートを表現するフレーバーを開発したんだ。ショコラには香水同様、味わいの段階や余韻といったものがある。それを香水のトップ・ミドル・ラストノートと融合して表現できればと思った。
WWD:通常食べ物では使用されないパチョリがラストノート“ヴォリュプチュー”に使用されているが?
二コラ:オリヴィエとの出会いがなかったら、パチョリを使用することはなかったよ。官能的な印象を出すにはパチョリがぴったりだと思った。ただ、強くウッディーな香りだから、開発には苦労したよ。バニラビーンズのダークガナッシュを加えて、生クリームの代わりにココナッツミルク、砂糖の代わりにハチミツを使用するなど工夫して調和のとれた深みのある味に仕上げた。ショコラの限界を超えることができたと思っているよ。
WWD:“エンジェル”の他のフレーバーに関しては?
ニコラ:爽やかなトップノートのフレーバー“セレスト”は、ベルガモット風味のガナッシュとマンダリンのジュレをミックスしミルクチョコレートでコーティングした。繊細な味わいに仕上がっている。ミドルノートの“デリシュー”はクランベリーをちりばめたマシュマロをプラリネに重ねた、酸味と甘みの絶妙なバランスと食感が特徴だ。そして、アイコニックな“エンジェル”のボトルを象った“エトワール”はオリヴィエが選んだマダガスカル産のカカオそのものの味を楽しめるようになっている。
WWD:“エンジェル”のベストの味わい方は?
ニコラ:香水同様、トップ・ミドル・ラストの順番と言いたいところだが、“エトワール”をミドルノート“デリシュー”の後に味わうのがベストだと思う。
WWD:自分で香水は付けるか?
ニコラ:仕事中はつけないけど、「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」の“ノワール エピス(NOIRE EPICES)”を使っているよ。
WWD:ショコラティエの仕事ってどのようなもの?
ニコラ:僕のミッションは3つある。まず、クラシック・ショコラのメンテナンスをすること。40年前のレシピを時代の変化に合わせてアレンジするんだ。でも食べる人には同じショコラって思ってもらう必要があるから難しいよ。2つ目は季節ごとのコレクションの開発。3つ目は、時間をかけて行う先のコレクションの研究開発だ。新しいフレーバーの開発には最低2年間はかかるからね。
WWD:競合ブランドのショコラティエとの交流は?
ニコラ:それぞれのブランドにはシグニチャーがある。例えば「メゾン・デュ・ショコラ」の場合は“バランスのあるエレガントな味わい”といったようにね。だから、ライバルというよりは同志って感じで、皆で集まって食事をすることもあるし、作ったものを持ち寄って交換することもあるよ。会えると嬉しいね。
WWD:今後手掛けてみたいことは?
ニコラ:フランス語で“よりよい暮らし”といった言葉がある。それをキーワードに、栄養学の観点を盛り込んだナチュラルで健康になれるようなショコラを開発したいな。
【関連記事】
「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のショコラティエに聞く チョコレートの極意とは
ファッション界が愛するスイーツブランド「ユーゴ & ヴィクトール」が日本上陸
ピエール・エルメ・パリ 青山がリニューアルオープン