ニューヨークのスニーカーショップ「キス(KITH) 」が運営するシリアルバー「キス トリーツ(KITH TREATS)」が8月25日、東京・渋谷にあるナノ・ユニバース ジ オークフロアー(NANO UNIVERSE THE OAK FLOOR)の1階にオープンした。ニューヨークを拠点に今世界で最も注目を浴びているショップの一つと言っても過言ではない「キス」がなぜ日本に出店したのか? しかも、どうしてスニーカーショップではなく、シリアルバーなのか?来日したオーナーのロニー・ファイグ(Ronnie Fieg以下、ロニー)に真相を聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):日本への出店の経緯は?
ロニー:日本も東京の文化も大好きだったからね。数年前にナノ・ユニバースがベーカリーを出したときに日本にいたんだけれど、小さいスペースながらコンセプトがしっかりしていて、空間の素晴らしさに感動した。「キス トリーツ」はニューヨークとマイアミで成功して、次はどこに出そうかと考えていたんだ。日本のファンが「キス」の世界観を待っているのも知っていたし、家族のような友達のジュンヤ(「キス トリーツ」の日本での運営を担当するJF&Fの俣野純也)もいる。だからいつか日本に恩返しできないかと思っていた。
WWD:初の海外出店だが、アメリカ国外に出店しなかったのはなぜ?
ロニー:もしアメリカ以外でどこかに出店するなら、昔から日本と決めていたよ。僕は日本が世界で一番好きだから、ずっと東京で何かできるチャンスがあればと思っていた。ちょうどビジネスを拡大しようと思っていたタイミングだったしね。
WWD:なぜ本体の「キス」ではなく「キス トリーツ」を出店したのか?
ロニー:今、東京に「キス トリーツ」のようなお店がなかったからね。日本にはアメリカのシリアルが無いし、目新しく思ってくれるんじゃないかと思ったんだ。アメリカでは「キス」と「キス トリーツ」は別の業態なんだけど、今までに手掛けたことのないマーチャンダイジングをやってみたくて、バーで洋服やアクセサリーを売ろうと思っている。Tシャツやスエット、アクセサリーも並べるよ。
WWD:東京店のコンセプトは?
ロニー:「キス」はライフスタイルブランドでもあるし、小さなセレクトショップの集合体でもある。シューズやアパレル、アクセサリー、本、アート、それにホームグッズも電子グッズも全てね。いろんなものを手に入れられる場所、それが「キス」なんだ。「キス トリーツ」は、そんな「キス」ブランドの延長線上にあるフード業態。子供の頃からシリアルが大好きで、朝、昼、晩、3回食べるぐらいのシリアル中毒だった。だから両親は、シリアルを食べさせてくれなくなって、友達の家で食べていたよ。シリアルバーは、小さい頃からの夢だったんだ。3年前にブルックリンの「キス」の中に1号店をオープンした。アイスも一緒に販売して、アイスとシリアルを混ぜて一緒に食べられるようにした。それからミルクシェイクを始めたり、ボウルでいろんな味のシリアルをミックスできるようにしたりした。僕は、常に自分の好きなことや大切なモノを全部詰め込めるような場所を作りたいと思っている。だから「キス トリーツ」もメーンはシリアルだけど、アイスも食べられるし、「キス」もただスニーカーやアパレルを並べるだけにしたくなかった。東京店も同じだね。
WWD:「キス トリーツ」東京店では、どんなメニューを用意する?
ロニー:数種類用意しているけど、僕が作った“ファイグスター”っていうオリジナル味がある。どんな味かは、バーのマスターに聞いてみてほしい。
WWD:日本のマーケットはどう思う?
ロニー:すごくユニークだよね。アメリカ人よりも一人一人の個性が確立していて、感動するよ。ショッピングの仕方も、日本人は世界のどの国よりも商品の本質をちゃんと見ている。
「キス」のゴールドバングルや「カルティエ(CARTIER)」の”ジュスト アン クル(JUSTE UN CLOU)”などを重ね付け
この日の時計はゴールドの「ロレックス(ROLEX)」
スニーカーは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」とコラボした「ナイキ(NIKE)の”エア ヴェイパーマックス(AIR VAPOR MAX)”
WWD:今後の計画は?
ロニー:まずは東京の店舗を無事にオープンして軌道に乗せることだね。それ以降のことは頭の中では考えているけれど、まだ発表できない。「キス」はサプライズを届けるのが一つのこだわりだから、今は教えられないんだ。ただ、Tシャツやスエット、アクセサリーは、定期的に新しいデザインを発売する。限定メニューも毎月とは言わないけれど変えていくし、リスト化しようかなとも思っている。
WWD:ロニー自身もインスタグラムで57万以上のフォロワーがいるが、インスタグラムでの発表を楽しみにしていい?
ロニー:そうだね。「キス」の新商品はもちろん、僕自身も大好きで興味がある。だから自分からも発信するよ。
WWD:日本での「キス」の出店予定は?
ロニー:日本でオープンする計画は無いし、出店しないとはっきり言うよ。「キス トリーツ」が唯一のストアになる。
WWD:アメリカでの出店は?
ロニー:「キス トリーツ」は「キス」の店舗内でしかオープンしないし、急激に広げるんじゃなくて、1店舗ずつ確実に育てていく。もちろん、もしかしたら今後出店するかも知れないけど、「キス」はサプライズを届けるのがこだわりだから絶対に出店前には話さないよ。
オープン前夜に行われたレセプションパーティーの様子。多くの関係者が集まり、ショップの前に人が溢れた。
ショーケースにディスプレーしたTシャツやパーカ
WWD:好きな日本ブランドは?
ロニー:「ノンネイティブ(NONNATIVE)」「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」「ワンストローク(ONE STROKE)」「ビズビム(VISVIM)」「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)」「ヒューマンメイド(HUMAN MADE)」かな。好きなショップも聞く?ユナイテッドアローズ&サンズ、ベンダー(VENDER)、伊勢丹だね。伊勢丹はいろんなブランドがあるけど、ごちゃごちゃしていなくて、ブランドの世界観がちゃんと表現されている。表参道ヒルズのエディション(EDITION)もすごいブランドを扱っているのにキュレーションされているね。表参道ヒルズの奥に「オニツカタイガー(ONITSUKA TAIGER)」があるんだけど、僕はあそこ一帯がすごく好きなんだ。あとはリトゥ(RETAW)、クンバ ブックショップ(KUUMBA BOOK SHOP)、代官山蔦屋、それに来日すると最初にゴールデンブラウン(GOLDEN BROWN)のハンバーガーを食べる。成田から直行だね(笑)。あとは、忘れちゃいけないのが、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)。世界一のショップだよ。
WWD:ドーバー ストリート マーケットのどこが好き?
ロニー:それは愚問だね。だって、ビジュアルがとにかく素晴らしいし、今まで見た中で最も商品の見せ方が素晴らしい。まるで博物館のようだよ。
WWD:インスパイアされるものは何?
ロニー:さまざまなカルチャーから学ぶことが多い。日本は細部までこだわるところがいいね。今アマンホテルに泊まっているんだけど、今まで泊まった中で一番美しいホテルだよ。すごく細かいところまでこだわっているし、そういう細かなところに僕も刺激されるよ。
WWD:日本で行ってみたいところは?
ロニー:南の島に行きたいね。白い砂浜があるところ。京都も行きたいんだけど、きっとジュンヤが連れてってくれるよ(笑)。ジュンヤとはすごく仲が良くて、僕のこともよく知っているから、日本に来ても食事に困らない。鉄板焼きがすごく大好きで、明日は表参道のうかい亭に行く予定なんだ。
WWD:鉄板焼きで好きなメニューは何?
ロニー:オンリー和牛(笑)。