ファッション
2000号記念連載

2000号分を振り返って思う「今のファッションが一番面白い」

 「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。

 「WWDジャパン」2000号では、私を含む新卒1、2年目が担当した39年分のファッションニュースの振り返りページの他、歴史を創った人物たちの名言集、エポックメーキングなコレクションまでまとめている。刷り上がった170ページ分の重みを感じながら、自分もエポックメーキング・コレクションのページをめくり、気になったコレクションはスマホを片手に検索して現存している全ルックを見てみた。だが、そんな伝説的なコレクションを見て感じたのは「今のファッションが一番よい」ということだ。例えば、「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」は全ルックを見た1999年春夏も「素晴らしい」とは思うが、今のコレクションやファッションを見た時に感じる感動と「欲しい」という欲望が入り混じったあの高揚感は湧かなかった。なぜか。正直なところ、自分でもその答えは分からない。だが、そんな時代を創ってきたデザイナーたちの言葉には、そのヒントがありそうだ。

 例えば、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は1983年に「ファッションには現在や未来が含まれていることが必要。ドレスは生きている女性が着るもので、美術館に展示されるものではない。ファッションは商いであって、芸術ではない」と述べ、さらに2003年には「お気に入りは常に次のコレクション。過去は決して振り返らない」という言葉を残している。ちなみにこの言葉は最近のインタビュー(11月27日発売号)でも繰り返している。また、08年にエディ・スリマン(Hedi Slimane)は「10年後のことなんてわからない。ファッションは今、この瞬間であるべきだから」と語った。

 彼らの言葉から一つの仮説を立てるとすると、私が「今のファッションが一番よい」と感じたのは、今のファッションが、今自分が生きている時代、この瞬間を反映しているからではないだろうか。だから自分が生まれていない時代のコレクションを見ても、いまいちピンと来なかったのではと。さらに言えば、自分が感動した2000年代のファッションに関しても当時と同じ感情は生まれなかったことを考えると、まさに「ファッションは今、この瞬間」でしかないのだろう。では、ファッションが“今”であるためにはどうしたらよいのか。それはやはり、時代を読み、時代をクリエイションに投影させることだと思う。古すぎても新しすぎても駄目で、デザイナー自身とブランドのアイデンティティーも反映させながら、ちょうどよいところを狙わなくてはならない。

 さらにファッションの難しい点は、カールの言葉を再び借りれば、「商いであって芸術ではない」ところだ。“今”のファッションを作っているデザイナーの1人、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)「ヴェトモン(VETEMENTS)」ヘッド・デザイナーのバックには法律とビジネスの分野で4つの学位を持つ弟のグラム(Guram)「ヴェトモン」最高経営責任者がいるように、ビジネス面でも時代に合わせて変化することが必要だ。どの国のどの店舗にどのくらい商品を供給すればいいのかということからキャッシュフローまで、柔軟かつ堅実なビジネス基盤なしには、どんなに素晴らしいクリエイションをしても消費者には届かない。

 新卒として入社し半年以上が経ったが、ファッション専門紙を名乗る「WWDジャパン」の使命は、そんなファッション業界で働く全ての人に“今”の情報を届けること、そして残していくことだと理解している。最新コレクションのレポートはもちろん、それを取り巻くビジネス、経済も守備範囲だ。例えば欧米で新たなビジネスモデルが成功していると聞けば成功の秘訣を聞くのはもちろん、実際にユーザーとしてサービスをレポートしたり、SNSで話題のネタまでチェックしたり、世界で今何が起きているのか幅広くカバーし、これからも届け続ける。ファッションが“今”を生きるためのアイデアを「WWDジャパン」から得て頂けるよう、私も尽力していきたい。


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