ファッション業界には占い好きが多いが、特にここ1〜2年でブレイクしているのが、占い師・しいたけ氏による「しいたけ占い」だ。彼と話すといつも、街医者を思い起こさせられる。医者通いを日課としているような人々で溢れかえる診療所をニコニコしながら眺め、診察室ではとりとめのない話や愚痴にまで耳を傾け、最後は安心させて家路につかせる。そんな包容力と共感力、ゆるさ、そして時折見せるダークサイドな一面などに人々は惹かれるのだろう。「ヴォーグ ガール(VOGUE GIRL)」での連載を皮切りに人気が沸騰し、イベントに登壇したり、ファッション界やエンタメ界で活躍する著名人を占ったり、最近ではテレビ番組にも(声だけ)出演するなど露出度も高まっている。テレビに出たことでツイッターのフォロワーは5万人増えて25万人となり、ブログの1日平均アクセス数も12万と、ちょっとしたインフルエンサーなどを大きく凌ぐ波及力を持っている。12月15日に書下ろし第2弾となる「しいたけ占い 12星座の蜜と毒」(KADOKAWA)が発売されるのを機に、しいたけ氏にインタビューし、占い師までの道のりや、2018年をハッピーにするポイントなどを聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):しいたけさんの占いの特徴とは?
しいたけ:私の占いはリーディングというものです。12星座占いを基本に、連載をしたり、個人鑑定をさせていただいたりしています。目指す占いの理想形は、“会社の人や友達には話せないようなことを、利害関係のない第三者として、一緒に答えを考えていく”ことです。今回の書籍では“蜜と毒”をテーマに掲げましたが、“蜜=長所”も、“毒=短所”も、その人の個性を織りなしているものであり、人生をより深くしてくれるものだから、それをよく知って前向きに生きていきましょう、というメッセージを伝えさせていただきました。
WWD:占いを学ぶようになったきっかけは?
しいたけ:早稲田の大学院に進み、政治哲学やソクラテスなどを研究する中で、占い師が権力者にアドバイスをしたり、為政の決断にまでかかわるケースが多く存在していることを知りました。当時は占いと政治判断はかなり近い存在だったんです。政治家、哲学家、芸術家などにとって、宗教もとても身近なにありました。だから、いろいろな物事を決断する際、人と相談するというよりも、むしろ自分のインスピレーションを大切にしていたのでしょう。夢で見たお告げを“神託”と考えたり、占い師や巫女などを神託者として起用したりしながら、疫病がはやればお祓いをしたり、遷都をしたり、戦いの戦略を決めたり。だから、政治学を学ぶ上で、占いは勉強せざるを得なかったんです。そして、「運も実力のうち」といいますが、そもそも“運”とは何なのかを探究したいと思ったんです。加えて将来を考えたとき、理系の人は専門店な道に進む人が多いけれども、文系大学院を出た身だと道が狭まりがち。自分も専門分野を捨てて一般職に行くのはもったいないなと思い、もう少し勉強を続けることにしたんです。
WWD:しいたけ占いと色は切っても切り切れないつながりがありますよね。オーラ占いもされていますし。オーラは見えるんですか? どうやって学んだんですか?
しいたけ:ちょうど大学院を卒業した後、オーラを見るという人を紹介されたんです。これは怪しいと思いましたよ(笑)。でも実際にお会いしてみたら、言われることがすごく当たっていて。なぜ初めて会った人のことを当てられるのか、学術的な興味を持ったんです。しかもその人いわく、技術だと言うんです。レッスン生を求めているということだったので、すぐに入門しました。ちょうどインドに行くということで、5~6人で訪れ、10日間、瞑想したり、医師やその道の権威と話したりしながら、いろいろなことを学ぶことができました。帰国してから1年半、さらに技術的なことを本格的に勉強しました。だから、生まれつき見えるというものではなく、レッスンでリーディングという技術を体得した、ということになりますね。これは絶対音感の持ち主に似ているのかもしれないと思います。生まれつきその能力が備わっている人と、後天的に学んで身につける人がいますが、僕の場合は後者ですね。最初に各々の色が持つ意味を勉強し、自分なりに統計を取り、その人をメディテーションしてその情報を脳内変換すると、色が浮かび上がってくるようになったんです。人によっては、ドレミファソラシドを色にあてはめたり、料理を色にあてはめたりと、変換方法はいろいろあるみたいですよ。ちなみに、勉強中だった若かりし頃、料理が好きな70歳の上品なご婦人とペアになってお互いをリーディングしていたとき、「あなたは出汁の効いていない味噌汁ね」と言われたことがありました。具材=知識はたくさんあるけれど、インテリぶっていてつまらない、ということだったのだと思います。われながらうまいこと言うな、ああ、分かる分かるという感じで(苦笑)。自分の得意なものにあてはめてその人や状況を説明する訓練をずっと続けてきたことが、今の力や仕事につながっているんだと思います。
WWD:しいたけさんの占いは、「すごく当たるんです!」という人も多いですが、人々に寄り添ったり、「自分をもっと好きになって!」「自分をもっと大切にしてあげて!」というメッセージが込められていて、「とてもポジティブになれるから信じているんです」という人が多いように感じます。
しいたけ:この道を選んだもう一つの理由にもつながるかもしれませんが、占いを通じて多くの人に会い、世の中の人々は何を不安に思っているのか、何に悩んでいるのかを、研究・調査したいという思いがあったんです。カウンセラーの代わりになれればという思いもありました。欧米では多くの人がメンタルクリニックや精神科医を利用するなど、カウンセリングしてもらえる機会が身近にあるんです。一方、日本ではまだまだ敬遠されがちで。そのため、不満や不安が爆発してから病院に行ったり薬を処方してもらったりすることになり、症状が重く治りにくくなってしまいがちなんです。だったら愚痴や弱音を吐ける場所、ニュートラルに緊張や不安を話せる場所が作れればいいなと思ったんです。占いは当たるか当たらないかも大切なことですが、“人の話を聞く”ということがより重要なのではないでしょうか。ありがたいことにファンが増えてくださっているのは、そういったニーズにマッチしたからかもしれないなという気がしています。今の時代、未来に不安を覚えていない人はいませんし、あなたはこういう人ですとか、こうなりますとか言いきられても、逆に不安が増してしまいますよね。だから意見は押し付けず、夢も壊さないように気を付けるようにしています。また、人々を癒やすことを最初から意識しているわけでもなく、あくまでも少しでもハッピーになれるように、心が軽くなるように手助けをしていきたいという気持ちで臨んでいます。
WWD:最近はどのような悩みが多いんですか?そして、その解決方法とは?
しいたけ:テレビに出演させていただいていると、女性ゲストは2つのタイプに分かれるケースが多いんです。一つは自分自身をきちんと理解し、自分の取扱説明書をうまく説明できる人。そういう人はよくモテますよね。もう一つは、内向的で、「私って誰?」「恋愛したいけど、そもそも好きな人が分からない」といった迷える人なんです。最近の若い人々は、学校でもより協調性が求められたり、SNSなどの発達もあり、物心がついたころから表面的なところでしか他者とつながっていなかったり、自分をどう見せたいかが優先されてしまったりして、深く人と語り合ったり自分を見つめることがなく今まで来てしまっている人が多いんです。また、「いいね」の数を気にして、ウケる情報、ウケない情報などの価値基準に左右されすぎてしまっている人もいます。本来、人は他人と話してこそ自分が分かってくるもの。読書もそう。人と話すこと、本を読むことで自分を知り、深めていくことが必要なのではないでしょうか。また、自分をある程度さらし出したり個性を発揮することも大切ですね。たとえば、インスタグラムにホテルの食事を挙げるとする。けれども、一方で「実はコンビニの〇〇弁当が好き」などと本当の自分を出せるか出せないかでも生き方や周りの反応、そして自分の心持ちは違ってきます。今は自分の情報を発信していかなければならない時代であり、キャラクターを出していくべき時代。だからこそ、自分の個性を知ることがより重要になってくるのです。
WWD:それが、新刊の「しいたけ占い 12星座の蜜と毒」で、自分の長所と短所を知る、ということにつながってくるわけですね。
しいたけ:今回の書籍のコンセプトは、“自分を知って、相手を知ろう”ということ。人間には光が当たるよい部分と、その反対にある影があり、それがその人の一つの魅力になっているということを掘り下げて書いていったものです。中身については、ぜひじっくり読んでいただきたいです。
WWD:では、2018年はどんな年になるのでしょうか?
しいたけ:実際に穏やかになるかどうかは分かりませんが、人々が“穏やかさを求める年”になります。実は16~17年は“暴露の年”だったんです。だから芸能人の不倫騒動なども隠しておきたかったことが暴かれたり、自分の本性を見つめざるを得ない年だったんです。でも、18年はそういったニュースや風潮にうんざりして、もっと身近なことを大切にしながら、穏やかなホームパーティや近しい人との対話、仲間と一緒に小さな一歩を踏み出すといったことを大切にする年になります。ファッションでいうと、自分に似合うと思っているものを積極的に選んで着るというよりも、「あなたにはこれが似合うのでは?」といった、人から勧められたものを着ることで運気が上がります。また、人の話をこれまで以上に聞いたり、話したりすることが大切になります。それは人間同士だけでなく、家電についても言えることなんです。家電量販店に行くとその時代が見えると思いますが、今まではスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が開発したiPhoneの進化により、できることが増え、それが人々をワクワクさせてきましたが、その流れは少し落ち着くことになるでしょう。その分、「アマゾンエコー(Amazon Echo)」や「グーグルホーム(Google Home)」などの音声アシスタントツールや、洗濯機や電子レンジなど家電や機械とも話す時代になります。「シリ(Siri)」は怒りませんしね。多くの生活者の中にも、人と会ったり話したりすることが少し怖くなっていて、怒られる可能性がないところで話したいという欲求が高まっている人が増えています。コミュニケーションの形が変わっていくことになりそうです。
WWD:では、2018年のラッキーカラーは?
しいたけ:エメラルドグリーンとオレンジです、グリーンは森林や自分を見つめること、静けさなどを表現したもの。青と黄色の中間色で、攻撃性もなく、一番優しい、癒やされる色です。場所で表すと、寿司屋のカウンターに近いですね。僕もかなり人見知りなのですが、お寿司屋さんのカウンターは独特の場で、並んで座っている人々がそれぞれ大将と会話をし、周りはそれを聞くでもなく聞かないでもなく、でもなんとなくみんなが気にし合っているという状況です。特に場を盛り上げる必要もなく、ただゆったりと座って食事や会話を楽しんでいるという穏やかな光景といえるでしょう。もう一つのオレンジは、17年の赤が、激しく、全力で、自分の限界を打ち破れ、といったメッセージを帯びたものでしたが、18年はそれが少し落ち着いてきます。キャラクターが大切な時代なので個性も出していかなければなりませんし、能動的に自分から動かなければならないのですが、それでも、昨年の「!!!」とビックリマークが3つついたメッセージから、「!」が1つになるぐらいのテンションに落ち着くことになります。
WWD:ぜひ聞きたい、という人が多いのですが、恋愛運を高めるためにはどうしたらよいのでしょう?
しいたけ:恋愛運を上げたい人は、ある種、チャレンジをするのがよいですね。いつも黒のジャケットを着ている人がワンランク上の黒のジャケットを買う、というのではなく、別の色にしたり、いっそのこと革ジャンを着てみる。あるいは、髪型を変えてみる。特に、スタイリングを人に任せたり、勧められたものを取り入れることを推奨したいですね。いつもとパターンを変える、ということなのですが、そうすることで、少しだけ不安定という状態が生まれ、そこに恋愛の要素が入ってきやすくなるんです。職場でも新人が入ると、ういういしさもありますが、ある種の不安定さが生じるため、そこに優しさが生まれ、恋愛などにもつながりやすくなるんです。尊敬している名越康文先生も、カウンセリングさされていて、その人の人生に良い兆候が生まれるときには、たいてい、いつもとは道順を変えたり、バッグを変えたり、髪型を変えたり、何かパターンが変わっていることが多いと指摘されていました。環境を変えるという意味では、引っ越しもよいですね。強制的にいるものといらないものを選別することになり、自分に必要なものがあらためて分かるよい機会になります。また、人が来やすい環境を作ることで、運を呼び込み、恋愛が生まれやすくすることも大切です。
WWD:「WWDジャパン」の2018年新年号(12月25日号)では、2018年の開運キーワードなども紹介させてもらいますが、その他、しいたけさんの占いを知ることができる新しい場所などは増えましたか?
しいたけ:この10月から、アメーバ(Ameba)の占い館SATORI内に「しいたけの部屋」というページを持たせてもらいました。自分のリーディングの要ともなっているオーラカラーを主体にした占いをここでしています。是非一度のぞいて見てください。