クリスマスの朝、スタートトゥデイから「“ZOZOSUIT”を試着してみませんか」という誘いを受けた。しかも、動画撮影もOKとのこと。二つ返事で快諾し、幕張にある本社へ向かった。その道中、何を聞こう、どうやって撮影しよう、などと色々考えてみたが、やっぱり一番知りたいのは、“ZOZOSUIT”がどういうもので、どうやって使うかだ。消費者目線でレポートするために、(着用姿を撮影するのは腰が引けるが、恥を捨てて)自分が初めて見た感想をそのままに、動画に収めることにした。
登場した“ZOZOSUIT”は、思ったよりも小さいサイズだった。袋から出すと、中身はさらに小さい。パンツとトップスが別になっていて、素材はスポーツ製品にあるようなストレッチ素材に、ゴムのような質感の独自素材が張り巡らされている。ここに測定のための1万5000カ所もの測定機器が入っているという。精密機械の入った通信基盤は全部で4つ。胸部と背面、両足太ももの外側だ。
早速、着てみる。自身は痩せ型中背だが、ゴムのような素材のせいか、若干着用に手間取った。インナーの上から着用し、トップスは男性なら何もつけない。着る際に生地を引っ張るわけだが、それがスイッチとなって、勝手に電源が入るようだ。着用後は「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」内に設置予定の“使い方”のページを参照しながら、計測を行うだけだ。
アプリには着用方法が書いてあり、次へ進むボタン押すと、Bluetoothを介して“ZOZOSUIT”とアプリが同期された。続けて「測定開始」ボタンを押すと、5秒の間が空いて測定が開始した。その間は両手を横に広げ、楽な体勢を維持する。ものの数秒で測定は終了した。そして、すぐアプリ上に細かな採寸データが表示された。しかも、ウエストやバストだけでなく、足首の周囲や首回りなど、かなり細かい。これで測定は全て完了で、個人データとして「ゾゾタウン」側にデータが保管される。まだ詳しくは明かされていないが、このデータをもとにプライベートブランドや既存ブランドのアイテムを選ぶことになるのだろう。
続けて、女性記者にも同じサイズの“ZOZOSUIT”を着てもらった。“ZOZOSUIT”はそもそもユニセックス仕様である程度の身長差・体重差には対応できるようになっているため、サイズ展開はさほど多くないという。ただ、痩せ型だったり、個人の体型によっては生地が伸び切らず、計測できない部分もある。今後は、すでに注文を受け付けている海外展開にも対応できるサイズを準備していく予定という。着用した感想について、「アンダーバストなど、女性ならではのサイズを誰にも知られずに計測できるのは画期的。無料配布するものだからと思っていたが、測定スピードも早く、精度も想像以上だった」という。たしかに、女性にとっては自分だけで正確なサイズ情報を得られること自体が大きなメリットだ。毎日使えば、サイズ管理なんかにも使える。
ちょうど前澤友作・社長がツイッターで「生産量が充分に用意できず年内の配送が難しくなったため、大変申し訳ありませんが延期させてください。年明けてなるべく早いタイミングで開始させます」とコメントした通り、発送開始が待たれる“ZOZOSUIT”。実際のアイテムを見ることで、その技術力についてはこの目で確かめることができた。とはいえ、まだまだ気になることは山積みだ。そこで、こうした一通りの体験を終えた後、“ZOZOSUIT”の開発を担当する常井康寛PB準備室ディレクター(以下、常井)に、聞きたいことをぶつけてみた。
WWDジャパン(以下、WWD):“ZOZOSUIT”の素材は?
常井:トップスは本体がポリエステル89%、ポリウレタン11%。別布はポリエステル92%、ポリウレタン8%。ウエストバンドがポリエステル66%、ポリウレタン34%。ボトムスは本体がポリエステル89%、ポリウレタン11%。別布がポリエステル92%、ポリウレタン8%。ウエストバンドがナイロン50%、ポリウレタン28%、ポリエステル22%。
WWD:「伸縮センサー」はどこに内蔵しているのか?
常井:“ZOZOSUIT”の全身に張り巡らされている。
WWD:胸部に設置された機械の意味は?
常井:全身を計測するための機械の一部。胸の部分に電池やBluetooth接続機器が設置されている。呼称は特にない。
WWD:計測カ所が1万5000カ所ある理由は?
常井:“ZOZOSUIT”にはセンサーが150個あり、そのセンサーによる計測箇所が現時点で1万5000カ所となっている。
WWD:原価はどのくらいか。また、現在は無料だが、今後は販売する予定か。
常井:原価は非公表だが、現在は1着目が無料配布で、2着目以降は3000円で注文できるようになっている。
WWD:スーツ自体のサイズ展開は?
常井:数サイズ用意している。注文者の身長・体重に合わせて適切なサイズをお届けする。
WWD:注文者に対して、“ZOZOSUIT”はオーダーメードではなく既存サイズのものを配るイメージか?
常井:オーダーメードではなく、数サイズを用意しているが、伸縮性のある素材を使っているため、あらゆる体型の方が着用可能だ。
WWD:「一家に一台」ということは、複数人で共有できるのか?
常井:複数人で共有し、使い回していただくことが可能。
WWD:どこで生産しているか。
常井:生産工場は各国にある。タグには生産国ベトナムと表記がある。
WWD:スーツ自体がさらに進化する可能性があるとしたらどの点ですか?
常井:前澤(社長)がツイッターで記載した通り、足の採寸もできるように研究中だ。
WWD:構想から実現までに要した時間はどれくらいか。
常井:非公開。
WWD:社内の開発チームは何人規模か。
常井:非公開。
WWD:スーツ開発への投資金額はどの程度の規模か?
常井:非公開。
WWD:ストレッチセンス社をパートナーに選んだ理由は?
常井: ストレッチセンス社が開発するソフトストレッチセンサーのテクノロジーの強みは、1つ目は着用できる柔らかい“ウェアラブル端末”であること。伸び縮みできるセンサーで、バッテリーも不要だ。2つ目は、とても精密で正確なデータを計測できること。また、センサーというデバイスだけでなく、センサーから取得したデータを集めて外部に転送する電子機器なども、ストレッチセンス社が開発をしている。
WWD:“ZOZOSUIT”は特許をとっているか。
常井:非公開。
WWD:“ZOZOSUIT”開発中、クリアするのが難しかった点は?
常井:非公開。
WWD:発表後のユーザーからの反響は?現時点でどのくらいの注文があるか?
常井: 11月22日正午の発売開始から10時間で、約23万件のご注文を頂いた。
WWD:注文者の年代別・男女別・国別の構成比は?
常井:非公開。
WWD:発送が遅れているが、現在の生産数と注文数、発送計画の進捗はどのようになっているか?
常井:非公開。
WWD:特に、プライベートブランドとの関わり方は?
常井:「ゾゾタウン」では計測した体型データを活用し、ファッションECの課題である“サイズの不安”を解消すべく、商品検索機能やレコメンド機能のさらなる充実を図りたい。プライベートブランド「ゾゾ(ZOZO)」から展開される商品で、“究極のフィット感”を実現するために活用していく。
WWD:具体的にはどういったアイテムに使用できるか、実用化のめどは?
常井:プライベートブランドはベーシックアイテムから展開を始める。アイテム詳細は追って発表する予定だ。
WWD:「ゾゾタウン」で扱っている出店ブランドとの関わりは?
常井:検討中だ。
WWD:“ZOZOSUIT”に続く“ZOZOSHOES”の発売めどは?
常井:非公開。
WWD:御社内に限らず、データを活用したさらなるビジネスの構想はあるか?
常井:非公開。