ファッション

メンズの“兄”から日本ファッションの“兄”へ “ジョニオ兄さん”サイコーです!

 2018年1月11日、(予定より30分遅れた)午後8時。この時間は、僕にとって、フィレンツェに出張中の日本人にとって、もしかするとファッション業界で働く多くの日本人にとって、誇らしい瞬間でした。フィレンツェで開かれた世界最大級のメンズファッションの総合見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)のメーンゲストとして「アンダーカバー(UNDERCOVER)」と「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」が合同ランウエイショーを開催したのです。

 デザイナーの高橋盾さん(以下、ジョニオさん)と、宮下貴裕さんとは、日本からパリを経由してフィレンツェに向かう飛行機が同じでした。ジョニオさんとは、パリに向かう飛行機の搭乗口でバッタリお会いして、「あ、フィレンツェまで同じスケジュールだね」なんて話をしながら機内に向かいましたが、後から聞いた情報によると宮下さんは 久々の海外でのランウエイに相当緊張していたようで、機内では一睡もできなかったとの話を聞きました。

 フィレンツェの空港では、僕が体験した中で最大級のロストバゲージが発生!僕の荷物も預けた3つのうち1つが出てきませんでしたが、「アンダーカバー」の荷物はかわいそうに相当出てこず、準備はさぞ難航したものと思われます。自分がメーンゲストの世界的ビッグイベントなのに、肝心の発表作が手元にない不安って、想像さえ及びません。しかしながら同僚が書いた通り、2人の合同ショーは“order / disorder”という同じテーマながら対照的で、見ごたえもたっぷり。30分ほど、夢のような時間を過ごさせていただきました。

 ショーの直前LINEで配信された「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」の2人の対談でジョニオさんが言及していますが、彼は日本のメンズデザイナーにおける“兄”なんです。業界では、「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」の北村信彦さんが長男だとしたら、ジョニオさんは次男。宮下さんが三男で、「N. ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」の尾花大輔さんが四男、そして「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」の相澤陽介さんが末っ子の五男坊なんて例えられ、5人は不思議な交流を続けているそうですが、ジョニオさんはフィレンツェでも“お兄さん”でした。

 ショーには「クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)」の森川マサノリさんを六男坊として(!?)招いていたし、ショーの後は“兄”として、ジョニオさんだって決して得意ではないインタビューを一手に担当。僕にはジョニオさんが、彼以上に人見知りでインタビューが苦手な、“弟”の宮下さんを気遣っているように見えました。それでも“弟”の宮下さんにコメントをもらおうと近寄ると、彼は「ファッションは、常に前進するんです。そして僕も過去を振り返らず、とにかく前に進むんです」と強く話してくれました。「もしかすると“兄”は、“弟”の強さを引き出そうとして、合同ショーを開催したのではないか?」そんな考えさえ頭をよぎりました。だとしたら“ジョニオ兄さん”、カッコいいです!

 もしかすると“ジョニオ兄さん”は、日本のメンズデザイナーの“兄”を超え、日本のファッションの“兄”になろうとしているのではないか?「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢さんを誘ってアマゾン ファッション(AMAZON FASHION)主催のプログラム「アット トーキョー(AT TOKYO)」で取り組んだ合同ショー「10.20 sacai / UNDERCOVER」を拝見し、そして今回「ソロイスト.」とのタッグまで目の当たりした今、そんなことを考えています。

 “ジョニオ兄さん”はクレバーで、僕、彼の立ち振る舞いは、以前から注目しています。そのきっかけは、リーマン・ショックや東日本大震災の直後でファッションに元気がなかった2011〜12年、これまで表に出ないことでクールを貫いていた節のあるジョニオさんが、急遽「ギャクソウ(GYAKUSOU)」のプロモーション動画やドキュメンタリー映画を通じて人前に現れ始め、自分が現れることで後輩デザイナーが臆することなく人前に出ることを半ば促し、デザイナーの存在感を増すことでファッションの活性化を図り始めようとした時。実際、映画について取材した時、ジョニオさんはそんな意図を話してくれ、「この人は、自分だけではなく、もっともっと大きな視点に立って自分の立ち振る舞いを考えているんだ」と知って、とてもうれしくなりました。

 きっと、「サカイ(SACAI)」との合同ショーも停滞する東京のファッション・ウイークを考えてのことだっただろうし、そうなると今回のタッグも自分のため、「アンダーカバー」のため、だけではなかったのでは?そう思うのです。

 というワケで、コレクションはもちろん、デザイナーの生き方さえ「カッコいい!」と思った合同ショー。その写真を皆さんとシェアします。僕は半年後、きっと「アンダーカバー」の洋服を着て、“兄さん気分”を味わっている、そんな気がします(笑)。

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