フィンランド発のインテリアブランド「アルテック(ARTEK)」が2月、運営する中古品販売のための自社サイト「アルテック セカンド サイクル(ARTEK 2ND CYCLE)」をオープンしました。これが、なかなかすごいんです。
いきなり何の話だ、と思われるかもしれませんので、簡単に説明をしておきます。「アルテック」といえば建築家アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)が創業したブランドで、「無印良品」ともコラボしたおなじみの椅子“スツール60”などが有名です。この“スツール60”は1935年から販売されており、世の中にはすでに半世紀以上経過した数多くのビンテージチェアが出回っていることになります。モノを人一倍大切にするフィンランドでは、家具を捨てるという概念がなく、いらなくなったモノはフリーマーケットで売ったり、人に譲ったりするそうです。そこで、昔販売した貴重なビンテージチェアを自社で買い戻し、修理をして再び欲しい人に向けて販売しようと2006年に始まったのが「アルテック セカンド サイクル」でした。
これまではヘルシンキに唯一お店(しかも予約を除けば、木〜土曜日のみオープン)があったので、レアな商品を求めて世界中からビンテージ家具のバイヤーやインテリアファンが集まっていました。僕も実際にお店に行きましたが、店内には見たことがないような量のビンテージ家具が所狭しと並んでいて、奥では商談が行われていました。
今月、ついにその公式サイトがオープンしたということは、世界中どこにいても貴重な商品を探すことができるということです。残念ながら値段表示などはなく、おそらく決済などのEC機能はないオンラインショールーム的なポジションですが、ネットで見て気になった商品は英語で問い合わせができる仕組みになっています。
では、これの何がすごいのか。まず、このサイトができたことで「アルテック」は新品を販売するだけでなく、一度使われた商品を買い戻して、今度はビンテージ商品として世界に向けて販売ができるようになります。アパレルで過去に販売した自社商品を買い戻して再度ネット販売をしている企業はほとんどないですよね。単一ブランドではないですが、いわば「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」と同じやり方です。結果的にシェアリング・ビジネスでありながら、“無駄を出さない”というサステイナブルな取り組みとして始まっているから面白い。今でこそ大量生産・大量消費に異を唱える企業も増えていますが、こうして新品と中古品を分け隔てなく自社で販売してしまうプラットフォームというのは、今後のビジネスモデルの1つの事例になるのではないでしょうか。
ちなみに、「アルテック セカンド サイクル」では商品を中古品とは呼ばず、“pre-loved products(愛着のある商品) ”と呼びます。日本のアパレルでは“中古販売に対するブランドからの反発”というものが少なからずありますが、そもそもの中古品に対する考え方がこうも違うものかと、サイトを見て感心してしまいました。