良品計画は19日、移転・増床する「無印良品イオンモール堺北花田店」(大阪府堺市)を20日のオープンに先駆けて関係者に公開した。売り場面積4300平方メートルは有楽町店(3700平方メートル)などを抜いて世界最大。売り場の約半分が食関連で占められており、野菜、果物、鮮魚、精肉、惣菜、その他の食品が並ぶ様子はスーパーマーケットと見紛うほどだ。「(既存の)『無印良品』は月に1~2回の来店頻度が多いが、この店は近隣のお客さまに毎日利用してほしい」(松枝展弘・同店コミュニティマネージャー)。食による集客で衣料品や日常雑貨などへの買い回りを促す。同店が成功すれば多店舗化する可能性もある。
「これからマグロを解体します!」。鮮魚コーナーのスタッフが45kgものクロマグロを鮮やかな包丁さばきで解体し、試食用の刺身をふるまう。スーパーの鮮魚売り場ならともかく、「無印良品」ではありえなかった光景だ。
氷が敷き詰められたショーケースには近隣の岸和田漁港や泉佐野漁港で水揚げされた鮮魚が並ぶ。門真れんこんや長ネギ、だいこんなど地元で仕入れた野菜も多い。精肉は生産者と直接開発した宮崎県産の黒毛和牛、沖縄あぐー豚などをそろえる。いずれも下ごしらえの加工はもちろん、おすすめの調理法の実演など、売り場の至るところにサービスカウンターを設けて、客とのコミュニケーションの場を増やした。松枝マネージャーは「街の八百屋さんや魚屋さん、あるいは市場、ご近所の縁側のような場所を目指す」と親しみやすさを強調する。
顧客とのコミュニケーションと地元密着は徹底しており、家庭の家具やインテリアの相談窓口「MUJI サポート」も同店を皮切りにスタートする。「無印良品」は1100万人の会員がいる買い物アプリ「MUJI パスポート」を通じて顧客に情報発信しているが、同店をフォローした顧客には日替わりの店舗情報を届ける。24台あるレジのうち半分はセルフレジで、その分、同店で働く約200人のスタッフの多くを対面販売や相談窓口など顧客とのコミュニケーションに振り分ける。
良品計画の金井政明・会長は「巷ではIoT(モノのインターネット化)やAI(人工知能)の話で持ち切りだが、ならばアンチ・インテリジェンスでやろうということ」と説明する。生鮮食品を中心に生産者と消費者の距離を縮めたり、顧客との密接なコミュニケーションによって「無印良品」をより生活に身近な存在にする。「毎日の積み重ねで地元に溶け込んだ店にしたい。1年後どうなっているか楽しみだ」と話す。