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「ルイ・ヴィトン」メンズのトップに初の黒人デザイナー きっかけは「フェンディ」のインターン

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、1月に「ルイ・ヴィトン」を去ったキム・ジョーンズ(Kim Jones)前メンズ・アーティスティック・ディレクターの後任に、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」クリエイティブ・ディレクターが3月26日付で就任すると正式に発表した。ヴァージルのファーストコレクションは、6月のメンズ・ファッション・ウイーク期間中に披露される。

 ヴァージルは就任について「『ルイ・ヴィトン』のメンズ・アーティスティック・ディレクターという役職を務めることを非常に光栄に思う。メゾンの伝統とクリエィティブな清廉さをインスピレーションの鍵として参照しながら、同時に今の時代に並行させたい」とコメントしている。

 LVMHとヴァージルの関係は、ヴァージルが2006年にカニエ・ウェスト(Kanye West)とLVMHの傘下ブランドである「フェンディ(FENDI)」でインターンをしていた時に始まった。当時「フェンディ」の会長兼最高経営責任者(CEO)を務めていたマイケル・バーク(Michael Burke)「ルイ・ヴィトン」会長兼CEOは「『フェンディ』でともに働いていた時から、ヴァージルと彼の成長には注目していた。彼の生まれ持ったクリエィティブな才能と既存の価値を打ち砕くアプローチが、ファッション業界だけでなく、今日のポップカルチャーの中で彼の価値を高めてきたことに非常にワクワクする」と語る。その後15年に「オフ-ホワイト」はLVMHが主催する「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」のファイナリストに選ばれ、キムのラストコレクションにヴァージルが訪れるなど、両者は関係を深めていた。

 さらに、同じくLVMH傘下の「リモワ(RIMOWA)」とのコラボについては1年近くウワサが浮上していたが、今夏発売すると発表された。ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOの息子でもあるアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)=リモワ共同CEOは自身のインスタグラムに「『オフ-ホワイト』以前からヴァージルのキャリアを知っていて、尊敬してきた。この偉大な友人とその才能をグループに歓迎することを誇りに思う。彼の『ルイ・ヴィトン』での素晴らしい仕事を楽しみにしている。あ、そうだ。『リモワ』 × 『オフ-ホワイト』は今年の夏発売するよ」というコメントをヴァージルとの写真と共に投稿した。

 ヴァージルはガーナ人の両親のもと、1980年にイリノイ州ロックフォードで生まれた。ウィスコンシン大学マディソン校で土木工学の学位を取得した後、イリノイ工科大学に進学し、建築学修士号を取得した。その後DJとして頭角を現し、地元でもあるシカゴでコンセプトストア、RSVPギャラリー(RSVP Gallery)を共同設立。カニエのクリエイティブ・ディレクターを務めていた他、カニエと共に「フェンディ(FENDI)」でインターンをしていた。2012年に「パイレックスビジョン(PYREX VISION)」を立ち上げ、本格的にファッション業界へ足を踏み入れた。

 「オフ-ホワイト」はイタリアのニューガーズグループ(New Guards Group 以下、NGG)のブランド。NGGは12年にマルセロ・ブロン(Marcelo Burlon)と、ミラノの人気セレクトショップ、アントニオ―リ(ANTONIOLI)を運営するクラウディオ・アントニオーリ(Claudio Antonioli)、ミラノ発のカジュアルブランド「ヴィンテージ55(VINTAGE 55)」のダヴィデ・デ・ジリオ(Davide De Giglio)の3人の共同出資で設立され、「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN」や「パーム・エンジェルス(PALM ANGELS)」などのブランドを傘下に抱える。

 13年にマルセロがヴァージルを誘い、NGGの資本で「オフ-ホワイト」がEC専売としてスタートした。「モンクレール(MONCLER)」「イケア(IKEA)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」「バレード(BYREDO)」、村上隆など多くのブランドやアーティストとコラボすることでビジネスを伸ばしてきた。特に17年11月に発売した「ナイキ(NIKE)」とのコラボシューズは反響を呼び、全世界で即完売した。アイコンでもある白黒ストライプのウエアはケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)やドレイク(Drake)、ビヨンセ(Beyonce)ら多くのセレブが着て、一気にストリートで人気を集めた。ここ数シーズンはテーラリングやファーコートなどラグジュアリーなアイテムもコレクションに加え、ウィメンズも強化している。19年にはイリノイ州のシカゴ現代美術館でヴァージルの過去と現在の作品を一堂に集めた大規模展覧会も開催予定だ。

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