大阪に拠点を置く「ボンクラ(BONCOURA)」は、デニムを主力とするブランドだ。ディレクターはそごう・西武に約20年間勤め、現在モデルや古着キュレーターも務める森島久。同ブランドはジーンズ2型のみで2011年にデビューした。ブランド名は、デニム生地発祥の国であるフランス語の「ボンクラージュ(Bon Courage / がんばれの意味)」に由来する。森島ディレクターは「日本語のぼんくら、つまり『愛すべき馬鹿人間になりたい』という思いも込めています」と説明する。
こだわりの一つがメード・イン・ジャパンだ。今や日本デニムのクオリティーは世界が認めるところだが、日本製だからといって全てが無条件で素晴らしいわけではない。森島ディレクターは「僕の目で全てチェックしたいから、結果的にメード・イン・ジャパンになっています」と語る。モノ作りは工場なくしては語れない。信頼関係を築くためにも毎週、必ずどこかの工場に足を運んでいる。「『森島さんに言われちゃ仕方ないな……』、そう言ってもらえたら勝ち!」と豪快に笑う。愛車のトヨタ“プラド”の走行距離は34万km。「1回の出張で、だいたい700~800kmを走破します」。
原綿の配合から関わり、旧式力織機で織られるデニム生地は1日に30m(ジーンズ10本分)しか作ることができない。リベット、フライボタン、ジッパーといった部材も全てオリジナルで日本製だ。ジーンズは、やや太めのストレートの“XX”(2万8000円)、自然なテーパードラインが美しい“66” (2万8000円)、針刺しタイプのシンチバック(尾錠)が付く“シンチバック” (3万円)、フロントがジッパーになった“Z” (2万8000円)の4型。東京ではメイデンズショップ(MAIDENS SHOP)やステップス(STEPS)、大阪ではロフトマン(LOFTMAN)などで販売されている。
ビンテージというキーワードも「ボンクラ」を語るうえで外すことはできない。森島ディレクターは小学校高学年頃から、まだアメリカ村という名前で呼ばれる前の御堂筋西側エリアに自転車で通い、知識を深めたという。「ビンテージに“森島久”を入れることで『ボンクラ』になる、そう思っています。唯一、心掛けているのは、翌年になったら着たくないモノは作らない、ということ。経年変化が楽しめる服だけを作っていきたいです。ジーンズは、その最たる例」。
北は札幌、南は熊本の卸先で月1~2回、「ボンクラ祭り」と名づけたイベントを開催している。ファンが「この色落ち見てくださいよ」「しっかり“育って”きたでしょ?」とうれしそうにジーンズの経年変化を見せにくるという。こういった声が高まり、「ボンクラ」を100%伝えられる場として15年にショップ、サロンボンクラを大阪府柏原市にオープンした。土日のみの営業だが、東京をはじめ府外からの来客が多く、海外からのゲストも増えている。「平均滞在時間は3時間前後で、オープンからクローズまでずっといるお客さんも多い(笑)」という。
森島ディレクターは52歳。今では子どもたちも「ボンクラ」を手伝っている。長男がサロンボンクラの店長を務め、次男がプレスや写真・映像制作を担当している。今後について聞くと、「地味かもしれないがファンが喜んでくれる服を作り続けたい。ただし、あくまで『ボンクラ』に」とまた笑った。
■サロンボンクラ
時間:12:00~19:00
定休日:月~金曜日(土日のみ営業)
住所:大阪府柏原市大県4-17-21