「ロエベ(LOEWE)」は、アメリカ人写真家のデイヴィッド・ヴォイナロビッチ(David Wojnarowicz)の4つの作品をフィーチャーした限定Tシャツを6月初旬に発売する。このTシャツの収益は全額ビジュアル・エイズ(VISUAL AIDS)に寄付される。各400枚限定で、価格は各1万4445円(税込み)。日本ではそのうち3種類を表参道店、銀座店、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)と公式オンラインストアで販売する。
ヴォイナロビッチは1954年アメリカ生まれ。エイズの合併症により92年に37歳の若さで亡くなったが、作品だけではなく、その壮絶な人生についても語られることが多い。幼少期は父親から虐待を受け、父親が目の前で撃ち殺したウサギを夕食で食べさせられたという話はよく知られている。作品の多くは、同性愛者である彼自身の体験が取り入れられ、そして、エイズと診断された後は政治的スタンスが強くなり、80年代に起こったエイズ危機を主なテーマとした重要で挑戦的な作品を発表した。その痛烈でストレートなメッセージは米・連邦当局の怒りを買ったこともあった。
ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)=「ロエベ」クリエイティブ・ディレクターは今プロジェクトを始動した理由を「勇気あるクリエイターで活動家であるヴォイナロビッチ氏の偉大な仕事に世間の関心を集めるため、そしてこれらを称えるため、今回のプロジェクトの構想を立てた」とコメント。
ビジュアル・エイズは、HIVに感染したアーティストの作品の保存とプロモーションを目的として88年に設立され、エイズに対する認識の向上と、視覚芸術の展示や出版に取り組んでいる団体だ。また、HIVと共に生きるアーティストの支援も行う。
今プロジェクトは5月31日にニューヨークでスタートし、それに合わせて、NYのプリンテッド マター ブックストア(PRINTED MATTER BOOKSTORE)で募金イベントを開いた。ここはアンダーソンがかつて「世界一の本屋」とインスタグラムで紹介したこともある店だ。
また、今回のTシャツプロジェクトに合わせて、ロエベ財団(LOEWE FOUNDATION)はヴォイナロビッチの師匠的存在で恋人でもあったピーター・ヒュージャー(Peter Hujar)の作品展を開催する。会期は6月4日~8月26日、毎年開催される国際写真祭フォト・エ スパーニャ(PHOTOESPANA)」の一環として、マドリードのグランビア店で開かれるもの。さらに6月27日には、マドリードのリナレス宮殿で、アートディーラーのグレイシー・マンション(Gracie Mansion)とフラン・ レボウィッツ(Fran Lebouwitz)の対談を行う。この対談では、ゲイ・プライドの起源となったストーンウォールの反乱への特別なオマージュとして、70~80年代のマンハッタンにおける政治とアートシーンがテーマとなる。
今回のプロジェクトは、プリンテッド マター ブックストアでキュレーターを務め、2017年に亡くなったシャノン・マイケル・ケイン(Shanon Michael Caine(1974-2017))に捧げたもの。