EC決済サービスを提供するBASEは15日、渋谷マルイ1階に「BASE」の常設店舗をオープンした。これまでも商業施設で出店ブランドを扱うポップアップストアを運営してきたことはあるが、常設店舗はこれが初めて。「BASE」を使ってECサイトを運営する小規模ブランドに対して、常にリアルな場での顧客との接点を作る狙いがある。
「BASE」を使っているブランドであれば、1日3万5000円の出店料を払うだけで、常設店舗の利用ができる。什器やPOSレジまわりはマルイのサポートを受けられるため、出店ブランドは商品とレジ用のお金、販売員を用意するだけだ。ただ、広さが約16平方メートルということもあり、一度に出店できるブランドは2つまで。基本的には先着順だが、すでに9月末まで申し込みがある盛況ぶりだ。
渋谷の好立地、しかも1階の入り口付近にこの価格で店舗を出せるというのは破格だろう。まずは1カ月の試験運用を経て、7月末以降の料金体系などを検討するという。鶴岡裕太BASE社長は、「今後大きく変わっていくであろう店舗のあり方を丸井と一緒に考えていきたい。出店場所にはこだわりたかったが、株主でもある丸井グループの協力があったからこそ、この場所この価格での出店が可能になった」と説明する。
READ MORE 1 / 1 初出店は“売れないバンド”のような攻めたブランド
鶴岡裕太BASE社長(左)とオールユアーズの大林正隆・営業兼TEIHEN代表
そんな常設店舗での展開第1弾となったのは、“LIFE SPEC”をコンセプトにベーシックな商品作りを続けるオールユアーズ(ALLYOURS)だ。出店理由についてオールユアーズの大林正隆・営業兼TEIHEN代表は、「もともとオンラインがメーンだったが、やはり実物を見てほしいという思いと、リアルな場での体験を提供したいという狙いがあった。4月には東京・池尻大橋に初の路面店を出したばかりだが、わざわざ遊びに行くような街でもないということで、認知度を上げるために隣町(渋谷マルイ)へ出向いてきたような感覚だ」と話す。
オールユアーズは2015年7月にスタートしたばかりのアパレルメーカーだが、これまで車を借りては洋服を積み、全国を行脚するようなかなり変わった戦略で事業を拡大してきた。「1カ月かけて広島まで売り歩いたりもした。自分たちを“売れないバンド”だと思っている。東京で待っているのではなく、顧客に対して積極的に出向いていくのが僕らの特徴だ。リアルな場ではゲストハウスに出店するなど、体験できる場所をたくさん作ってきた。自分たちだけでは知名度も上がらないので、コラボも積極的にやっては両社でファンを増やすようなコミュニティーの広げ方をしてきた」。毎週どこかしらでリアルな接点を作っているといい、最近では路面店からすぐの場所にあるコーヒーショップ「グッドピープル アンド グッドコーヒー」でもポップアップを実施したという。「路面店は全国でできたファンが東京に来た際に立ち寄ってもらえるような場所。だから、同じ街の中でも出店をして、街案内をしているような気分だ」。
積極的かつフットワークが軽いブランドだからこそ、丸井としても、BASEとしても今回の出店には大きな期待を寄せている。今後ブランドによってはワークショップのような取り組みなど、スペースをうまく使ったさまざまな施策を考えていくという。「どんな場所になるか、これからブランドとともに考えていきたい。今はブランドが自分でコミュニティや経済圏を選択できるいい時代」と鶴岡社長。こうした時代背景に合わせて、丸井とBASEがプラットフォームを提供することは、新しいお店のあり方を考える“ニューリテール”という観点からも注目すべき事例だ。これまで出店が叶わなかった“攻めた”小規模ブランドが低価格で一等地に出店をすることで、新たなビジネスやコミュニティーが生まれる可能性も高そうだ。