2019年春夏のピッティ&ミラノメンズでは、スポーツが一大トレンドだ。「MSGM」はバレーボール、「Z ゼニア(Z ZEGNA)」はテニス、「ニール バレット(NEIL BARRETT)」はダイビングさながら深海に想いを馳せたモードなトロピカル。こうしたブランドの中で一番、スポーツと現代社会、ブランドやデザイナーのアイデンティティーを上手くミックスしたのが、「マルニ(MARNI)」だ。
「マルニ」は、スポーツの祭典オリンピックに想いを馳せた。しかしそれは、スポーツ最高峰の舞台だからではなく、だからこそさまざまなアスリートが集う多様性に富んだ場所だから。ダイバーシティー(多様性)が叫ばれる時代にふさわしい、コレクションの出発点だ。その証拠にモデルは先シーズン同様千差万別で、柔道かレスリングにでも出場するような“ずんぐりむっくり”の男性から、陸上の長距離選手のようにスラリとした黒人などバラバラ。そんな男性たちは、ベースボールシャツやレスリングのガウン、スイムタンク、クリケットニットなど、さまざまなスポーツにヒントを得たユニホーム調のアイテムを縦横無尽にミックスする。着こなすアスリートが「さまざま」なら、彼らが身にまとうユニホームのインスピレーション源のスポーツも「さまざま」、そんなところだ。
「さまざま」なのは、これだけに止まらない。相変わらず、サイジングも「さまざま」だ。シワを寄せたナイロンブルゾンやベースボールシャツ、寝袋を脱構築して作ったボンバーズは巨大なシルエットなのに、クリケットにニットはピッチピチ。「さまざま」なサイズ感のアイテムを用意することで、選ぶ人にスタイルの主導権を委ねる。フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の「マルニ」メンズは、どこまでも自由奔放で、個々を尊重してくれる。
洋服を彩ったのは、人間の裸を抽象的に描いた画家、もしくはその一部を切り取ったカメラマンの作品だ。ユニホームに由来する洋服に、身体に迫る抽象的、もしくは写実的なアートを盛り込む。こうすることで、今シーズンのスタイルとスポーツの関係性を高めた。