ファッション

“服は使い捨て”の時代はもう終わり 西武渋谷店でファーコートなどのお直し催事が人気

 西武渋谷店が2017年秋に開始した、洋服のお直しやリメイクを受け付ける催事「リ・クチュール ピン打ち会」が回を重ねるごとに注目を集めている。催事を行っているのは、愛知・瀬戸でセレクトショップ、アトリエ・トレ(ATELIER_TRE)を運営している加藤敦子さんだ。同店は00年の開業以来、小売りと併せてお直しを受け付けており、口コミで客を広げている。ファストファッションの定着を受け、「服は1シーズンで使い捨てる」という層も一定数いるが、その反面「いいものに手を加えて長く着たい」と考える消費者も年々増えている。西武渋谷店は顧客のそういったニーズに応えるべく、加藤さんとタッグを組んだ。

 催事は17年11月の初回以来、2月の上旬と下旬、4月、5月とすでに5回開催しており、6回目を7月20~22日に行う。事前予約制で、西武渋谷A館5階モードプラスの売り場やVIP商談ルームなどでお直しの相談を受ける。5月に開催した際は3日間で15組ほどが訪れたといい、西武渋谷店の外商客が3回連続で訪れたこともあった。客の中心は30~50代の女性だ。ファッションを楽しんできた大人が、昔買った服が「質はいいけれどデザインが今の時代に合わなくなった」と持ち込むケースや、母親の遺品や贈り物などを「思い入れがあるから着続けたい」と相談に訪れるケースが多いという。

 商品が持ち込まれると、加藤さんは客の希望や身長、体形、雰囲気などを見ながらお直しの提案をし、丈や襟の形、シルエットなどを決めていく。多くのお直し専門店と加藤さんとが違う点はここだ。「お直しの専門店は職人さんなので、縫製だけを見ると専門店の方がうまい時もあるが、どこをどう直すかをお客さま自身が決めないといけない。それができないというお客さまは多い。お客さまが一番きれいに見えるデザインや今のトレンドを考えたお直し提案できることが私の強み」と加藤さんは話す。瀬戸で店を始める前にデザイナーとして働いていた経験や、自店のための買い付け業務、店頭での接客などが、全てお直し提案に生きているという。

 加藤さんがこれまで西武渋谷店の催事で受注したアイテムには、ミンクファーのロングコートなどがある。「母親から譲り受けたときに100万円したと聞いたが、ゴージャス過ぎて着られない」と話す50代の客が持ち込んだ。着物をよく着るという客だったので、着物にも合わせやすいケープへのお直しを提案。残りの生地は、タイトシルエットのスカートに大胆に作り変えた。「買ってほとんど着ていなかったため、次の買い物をするのに罪悪感がある」と話す客のカシミヤのマキシコートは、ショート丈に作り変えた。また、スカーフを複数枚使って作るスカートやワンピース、バッグなども定番の人気商品になっている。価格は直す箇所によって変わってくるが、ファーコートの直しで5万~6万円前後が多いという。スカーフで作るスカートは3万円から。

 お直しニーズの高まりを受け、加藤さんの瀬戸の店には「関西圏を中心に、遠方から訪れる客が毎月数組いる」という。西武渋谷店の催事にはまだ女性客しか訪れていないが、瀬戸の店には定年退職した男性がブランドもののネクタイを数十本持ち込んだり、10代の男の子が芸能人が着ていた衣装をリメイクで作りたいと相談に訪れたりしたことがある。「メルカリで二次流通が定着し、最近は古着にもあらためて注目が集まっている。服は使い捨てという意識は今後さらに薄れていくように感じる。そんな中で、お直しのニーズはいっそう高まっていくのでは」と加藤さんは話す。

 7月の催事では、お直しの受け付けの他、合同展「アンビアンス」の出展ブランドの中から加藤さんが選んだセミクチュールのウィメンズウエア「グリース」、ジュエリーの「サカ」も参加し、受注会を行う。

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