合計330万ドル(約3億6300万円)もの未払金を払わぬまま5月に清算され、休刊となった米カルチャー誌「インタビュー マガジン(Interview Magazine)」の元オーナー、ピーター・ブラント(Peter Brant)が同誌を再び買い戻した。
ニューヨーク州破産裁判所は8月29日、ブラントが同誌の清算の数カ月前に設立した持ち株会社シングルトン(SINGLETON)を通して150万ドル(約1億6500万円)で同誌の権利を買収することを承認。しかし、シングルトンが「インタビュー マガジン」の800万ドル(約8億8000万円)相当の債権を有し、ブラントが唯一の債権者であることを考えると、彼は実質無料で同誌を買い戻したことになる。
ブラントが150万ドル(約1億6500万円)で買収したのに対し、外部の投資家に提示されていた買収額は1000万ドル(約11億円)以上とされている。同誌の買収を検討していた投資家は、約60万ドル(約6600万円)もの給料未払いを理由に同誌を去ったファビアン・バロン(Fabien Baron)元エディトリアル・ディレクターや、英コンテンポラリー・アーティストのフィリップ・コルバート(Philip Colbert)と映画監督で写真家のシャーロット・コルバート(Charlotte Colbert)夫妻がいた。アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が創刊した由緒ある雑誌だが、実際の資産や知的財産権をほとんど持たない同誌にこの金額を払う者はいなかった。
アートコレクターでウォーホルの大ファンという富豪のブラントが以前の同誌発行元、ブラント パブリケーションズ(BRANT PUBLICATIONS)を清算したのは、同社に長年勤めてきたスタッフらへの未払金合計330万ドル(約3億6300万円)の支払いを回避し、新たに設立した自身の会社で「インタビュー マガジン」を復刊させるためだ。ブラント自身から自身への売却・買収は31日までに完了する予定だ。
内部メモによれば、ピーター・ブラントの娘で「インタビュー マガジン」のプレジデントを務めていたケリー・ブラント(Kelly Brant)はクリスタル ボール メディア(CRYSTAL BALL MEDIA)という新持ち株会社を設立し、同じ体制下で同誌の復刊に向けて動いている。復刊後はインスタグラムのフォロワーを増やし、全く新しい読者層の獲得を目指しているようだ。復刊第1号はトランスジェンダーモデルのハリ・ネフ(Hari Neff)を表紙に起用予定で、さらにリアーナ(Rihanna)のスタイリスト、メル・オッテンバーグ(Mel Ottenberg)をクリエイティブ・ディレクターに起用したという。しかしトップの運営体制は以前と変わらず、賃金不払いの歴史もある“いわくつき”の同誌のために働きたいと思うフォトグラファー、編集者、ライターはどれだけいるだろうか。