ファッション

ギャルトレンド再燃するか、SHIBUYA109とプリ機のフリューに聞く

 この夏じわじわと“ギャルブーム”が再燃の兆しを見せている。口パク動画投稿アプリ「ティックトック(Tik Tok)」を中心にパラパラが再び人気を集めたり、ファッション業界では女優・モデルの水原希子がプロデュースするギャルテイストのブランド「OK」のコラボルックも話題となった。しかし、今年ギャルブームが起こるとすれば、その中心に位置する女子中高生はみな2000年以降の生まれ。原点となった90年代のギャルブームを体験してはいない。ギャルブームは再び起こるのか。長田(おさだ)麻衣SHIBUYA109 lab.所長と稲垣涼子フリュー「GIRLS’TREND 研究所」所長に話を聞いた。

WWD:まず、ギャル自体の数は減っているのでしょうか。

長田麻衣SHIBUYA109 lab.所長(以下、長田):来館者にヒアリングをしていても、ギャル自体はたしかに減っていると思います。「周りにギャルがいる」と言っても、頻繁に見かけるというより、クラスに1人いるかどうかという状況ですね。

稲垣涼子フリュー「GIRLS’TREND 研究所」所長(以下、稲垣):全盛期よりは明らかに減っています。ただ、みちょぱのように誰が見てもギャルだと答えるような人がいる一方で、“ギャルっぽい人”は意外と多いんじゃないでしょうか。

長田:アンケートを取ると、ぺこやローラがギャルとして認知されていて、定義が広くなっているように感じます。

稲垣:90年代のギャルはファッションやメイクなど、ビジュアルがともなっていないといけなかった。でも、今は“内面がリア充だったらギャル”だと考える人も増えました。

長田:あと、意外とネガティブな印象では捉えられていないですよね。気分によって、TPOに合わせて今日はギャルっぽいメイク、という人もいるようです。ギャルはテイストになりつつあるのではないでしょうか。普段カジュアルな子がイベントの時だけギャルメイクでバッチリ決めていく、みたいな。露出は多いけど、下品じゃなくて、ちゃんとファッションを楽しんでいる。メイクもただ厚塗りしているのではなくて、上手なんです。

稲垣:昔はギャルといえば夜遊びというイメージもあったかと思いますが、最近は健康志向も強く、夜遊びや不良っぽいことがダサいと捉えられるようです。

WWD:そもそも、現代における“ギャル”をどう定義しますか。

長田:内面的なものだと思います。アンケートにもあるように、見た目は派手でも人情味があるとか、芯が通っていて強いけど優しい、みたいな人がギャルなんじゃないでしょうか。私が小学生の時に「GALS!」という漫画が流行りましたが、そこにもあったように、派手だけど人情味にアツイ人。そんな内面的な捉え方は昔から変わっていないような気がします。

稲垣:昔からそうですが、やはりメンタル的にリア充で人生を楽しんでいる人たちだと思います。でも、最近はファッションもこなれてきて、見せ方がわかっている感じ。ギャルのイメージビジュアルはどんどん変わっています。今のボリュームゾーンは、帰国子女っぽいいわゆる“髪かきあげ系”女子かもしれません。

WWD:ギャルのイメージビジュアルはどう変わってきたのでしょうか。

長田:SHIBUYA109が見てきた中では、コギャルブームがおそらく1993年くらい。ルーズソックスが爆発的に売れたのは95年でした。2000年代は少し息を潜めていたけれど、スタイリッシュになって、洗練されてまたトレンドとして浮上してきたように感じます。最近ではユーチューバーのけみお君がギャル文化に詳しくて、喋り方とかギャルの発信をしている影響力のある人だと思いますが、彼が作った(写真で長田所長が着用している)このTシャツみたいにコテコテなものをコンテンツとして取り入れる女子も多くて。彼女らはどこかネタっぽくギャルを取り入れていますよね。その一方で、先ほど稲垣さんが説明していた“髪かきあげ系女子”もいると思います。後者は自分たちをギャルとは思っていないかもしれないですね。

稲垣:われわれのプリントシール機(以下、プリ機)を軸に歴史を見ると、外装カーテンのところにモデルが登場し始めたのが2008年くらいなのですが、ギャル系日本人モデル、外国人モデル、多ジャンルな日本人モデル、ハーフモデルと変遷をたどっています。女の子は飽き性なので、こうやってプリのトレンド自体も少しずつ変化をさせているのですが、最近ではアジア系外国人モデルも登場しています。実はわたしは12〜13年周期でトレンドがアイドルとギャルで入れ替わっていると考えていて、最近ジワジワ増えていますが、本格的には20〜24年あたりにギャルブームが来るんじゃないかと。以前のギャルブームを98年ピークととらえていますが、これは渋谷でルーズソックスが95年にブームになったことからも、全国レベルで見ると決して外れていないと感じます。

そして、これはフリュー独自の考えだと思うのですが、われわれのプリはほとんどの女の子がターゲットです。世界観で言えば、それぞれの機種ごとにコンセプトが違いますが、ある程度誰にでも受け入れられるように狙っています。以前ギャル全盛期のプリに一般的な知名度が高い清楚系モデルを起用したことがあって。でも、やっぱりギャルモデルを起用した商品の方が人気だったんですよね。ギャルはどこか親和性があって、「努力すれば近付ける」からなのではないかと思います。

WWD:SNSなどテクノロジーのギャルブームへの影響はありますか?

稲垣:そもそも、女の子とSNSは密接な関係にあります。昔、ギャルが大ブームだった時に、お嬢様っぽい清楚系のファッションをしていたら、「流行に乗っていないからダサい」と思われがちでしたが、今はSNSのおかげでニッチな好みでも仲間が探しやすい時代になりました。ある程度何を着ても肯定されるというのは今の時代っぽいですよね。

WWD:では最後に、ギャルトレンドは復調していると感じますか?

長田:元気な感じはしています。これまでのような爆発力があるかはわかりませんが、ブームがふたたび起こると面白いですね。

稲垣:実際に波は来ていると思います。その前提で、“ギャル=リア充”と表現したように、ファッションやコスメといった自己投資も、インスタ映えのために友人とプチ旅行をする、といったリアルの遊びも活発です。ビジネスとしてはギャルブームがくることで「消費が増える!」という期待もあるのではないでしょうか。

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