H&Mの創業一族による非営利財団H&Mファウンデーション(H&M Foundation)とHKRITA(香港繊維アパレル研究開発センター)は9月3日、香港で布地のリサイクル施設を2つ公開した。H&Mだけでなく広くアパレル業界に利用を促し、廃棄物ゼロの100%循環型リサイクルを浸透させるのが目的だ。
1つ目は、熱水処理によってコットンとポリエステルを分離できる技術を用いた大型機械を導入したシステムだ。コットンとポリエステルの混紡布地はアパレル市場で最も需要があるが、品質を保ちながらそれぞれの繊維を分離させることは困難だった。しかし、HKRITAは、品質を保ちながら個々を分離させる技術の産業化を目指した機械を開発した。この熱水処理のリサイクル技術の開発には、日本の愛媛大学と信州大学も参加している。廃棄物ゼロの「100%循環型ファッション業界」を目指す。
2つ目は、H&MファウンデーションとHKRITA、香港の紡績会社ノヴェテックス(Novetex)のコラボレーションで生まれた衣類のリサイクルシステムを用いた小型コンテナだ。この小型コンテナにいらない服を持ち込むと、熱処理で洗浄し布地を粉砕して繊維にした後、紡績して糸を紡ぎ、そこから新たな服を生み出すことができる。「布地リサイクルの研究を進め、循環型ファッション業界に向けて発展のスピードを上げることで、地球と私たちの生活環境を保護することを目的としている」とH&Mの広報担当者は語る。
H&Mファウンデーションのエリック・バン(Erik Bangs)=イノベーション・リードは「これは新しいファッション業界に向けた重要な一歩だ。この技術をスケールアップし、ファッション業界で自由に利用できるようにすることで、 限られた天然資源への依存を減らし、増え続ける世界の人口に対して衣服の提供を続けることが可能となる。また、実際に見てみることが一番大切だ。消費者は、不要な衣服が新たな資源として生まれ変わる様子を自分の目で見れば、リサイクルについてより深く理解し、自身の行動がもたらす影響を認識することもできる」とコメントを発表した。
また、HKRITAのエドウィン・ケー(Edwin Keh)最高経営責任者は「革新的なリサイクル技術の開発に成功した後、それらを産業として実用化に移すための努力を続けてきた。これにより主要な産業の一つであるファッション業界を活性化させることを目指す」と語った。
H&Mファウンデーションは、4年間にわたりHKRITAに580万ユーロ(約7億5000万円)の投資を見積もっている。この投資は、H&Mが全世界で展開する古着回収サービスの余剰金がH&M ファウンデーションに寄付されたことで可能となった。H&Mファウンデーションは余剰金の50%をリサイクル技術の開発に寄付し、残りの50%を社会貢献活動に寄付している。