SNSアナリティクス企業、リッスンファースト(LISTENFIRST)の調査によれば、2019年春夏ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYFW)でSNSを制したブランドは、設立50周年を迎えた「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」だった。
「ラルフ ローレン」は、ブランド設立50周年を記念して、ニューヨーク・セントラルパークのベセスダ・テラス(Bethesda Terrace)でファッションショーとパーティーを開催。SNSのエンゲージメントが他のNYFW参加ブランドに比べて約2倍の450万を記録した。またインスタグラム単体でも、NYFW期間中に最もエンゲージメントの多かった投稿1〜5位を総なめ。上位5位の投稿は、デザイナーのラルフ・ローレン自身の写真、コレクションのルック写真、フォトグラファーのアレクシ・ルボミルスキ(Alexi Lubomirski)が撮り下ろしたパーティーに参加したセレブリティーのポートレート写真だった。
「ラルフ ローレン」に次いでSNSのエンゲージメントが多かったブランドは、イブニング・ウエアブランドの「シェリー ヒル(SHERRI HILL)」で170万、「トム フォード(TOM FORD)」が160万、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」が140万、「コーチ(COACH)」が88万4600、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」が77万8300、「クリスチャン・シリアノ(CHRISTIAN SIRIANO)」 が56万4600、「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」が44万5600、リアーナ(Rihanna)が手掛けるランジェリーブランド「サヴェージ × フェンティ(SAVAGE X FENTY)」が41万1400、「キャロリーナ ヘレナ(CAROLINA HERRERA)」が35万8800だった。同調査結果は、各ブランドによるフェイスブック、ツイッター、インスタグラム、ユーチューブ、グーグルプラスにした投稿へのリプライの多さやフォロワーの増加、ツイッターとグーグルプラスのハッシュタグとタグ付けされた数を基にしている。
ビッグネームブランドを抑えてエンゲージメント2位についた「シェリー ヒル」について、リッスンファーストのマーケティングチームを率いるトレーシー・デイヴィッド(Tracy David)は「『シェリー ヒル』は、フィリピンのスターのピア・ウォルツバック(Pia Wurtzbach)とカトリオナ・グレイ(Catriona Gray)の写真を投稿したおかげで、フェイスブックでエンゲージメントが多かった投稿上位3位を奪った。さらに、ブランドの投稿に友達をタグ付けしたりシェアをすると、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)のコンサートチケットがもらえるというキャンペーンが前回のコレクションで奏功したため、今回も同様のキャンペーンを行なっていた」と説明する。
昨年の18年春夏ファッション・ウイーク期間と比べた今期のSNSのエンゲージメントは、「ラルフ ローレン」は前年同期比261%増、「コーチ」は同50%増、「トム フォード」は同26%増、「クリスチャン・シリアノ」は同19%増、「キャロリーナ ヘレナ」は同17%増、「カルバン・クライン」は前年と変わらず、「シェリー ヒル」は前年同期比3%減、「オスカー デ ラ レンタ」は同10%減、「マイケル・コース」は同54%減だった。
「マイケル・コース」が昨年に比べてエンゲージメントを落とした理由についてデイヴィッドは「『マイケル・コース』はNYFW最終日の9月12日にショーを開催したため、他ブランドより測定期間が短かったからだ。昨年9月と比べ同ブランドのインスタグラムの投稿数が49%も減少していることもエンゲージメント減の原因の1つとなるだろう」と解説する。
「コーチ」はセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)とのコラボコレクションを発表したことに加えてシー・ナウ・バイ・ナウのアイテムも発売。これらのアイテムはブランドの投稿の中でもトップのエンゲージメントを獲得した。「トム フォード」は、デザイナーのトム・フォード本人が登場するショートビデオに加え、ショーのディテールルックやカーディ・B(Cardi B)、トム・ハンクス(Tom Hanks)らセレブリティーの写真もエンゲージメント増の一助となった。
今期のNYFW全体を振り返り、リッスンファーストのファッションとビューティ部門を担当するミランダ・マックウィーニー(Miranda McWeeney)は「『イージー(YEEZY)』やヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)、ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)などSNSで必ずバズるブランドやセレブが今期は登場しなかったものの、ツイッターで“NYFW”とつぶやかれた回数は18年春夏シーズンと比較し2倍以上で、102万回に上った。セレブやインフルエンサーは引き続きSNSのコンバージョンを上げているが、50周年の『ラルフ ローレン』がやはり際立っていた」と分析する。