三陽商会は「マッキントッシュ ロンドン」の認知度アップに努める
三陽商会とルックは、共に主力ブランドの契約終了のダメージから回復を目指して、後継事業や既存事業の育成に注力する。百貨店のモデレートゾーンが苦戦する中、どのような提案ができるか、今期が正念場だ。
三陽商会は30年ぶりに売上高1000億円を割り込む
三陽商会の2015年12月期連結決算は、売上高が前期比87.8%の974億円、営業利益が同64.4%の65億円だった。同社が売上高1000億円を割り込んだのは30年ぶり。6月末で売上高の半分を占める英「バーバリー(BURBERRY)」のライセンス事業が終了したため、秋冬以降は400店舗以上を後継の「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「ブルーレーベル・クレストブリッジ(BLUE LABEL CRESTBRIDGE)」「ブラックレーベル・クレストブリッジ(BLACK LABEL CRESTBRIDGE)」に切り替えた。
「バーバリー」事業の終了前の上期(1〜6月)の店頭販売は前年同期比104%、終了後の下期(7〜12月)が同70%だった。10〜12月に限れば同64%だった。営業損益は上期が77億円の黒字に対して、下期は11億円の赤字だった。「『マッキントッシュ ロンドン』は重衣料を得意としており、認知度不足も手伝い、計画に届かなかった」「『ブルーレーベル・クレストブリッジ』と『ブラックレーベル・クレストブリッジ』は名称が変わって若干の戸惑いもあったようだ」(佐久間睦・取締役専務執行役員事業本部長)。
微増収減益のルック 内容にこだわった収益基盤を作る
一方、ルックの15年12月期連結決算は、売上高460億200万円(前期比101.0%)、経常利益6億6000万円(同40.7%)だった。14年4月に子会社化したレッセ・パッセの売上高が初めて通期分加わったことや韓国事業の成長によって、前期並の売上高を確保した。だが、7月の「トリーバーチ(TORY BURCH)」終了の影響で大幅な減益になった。
ルックは18年12月期を最終年度とする新中期経営計画を発表。「トリーバーチ」終了に伴う大幅減収を最小限に留め、3年がかりで売上高を前期の水準に戻す。既存事業では「スキャパ(SCAPA)」や「キース(KEITH)」などの婦人服ナショナルブランド(NB)の企画力とモノ作りを強化する。「イルビゾンテ(IL BISONTE)」「マリメッコ(MARIMEKKO)」「アー・ペー・セー(A.P.C.)」「レペット(REPETTO)」の4つの主力事業に集中的に投資し、新規店舗を計画する。年内にこの4ブランドで14の新規店を開く。一方で、不採算事業の廃止や撤退にも着手する。新規事業開発では、将来の主力事業を育てるべく、積極的にNB事業の開発や新たなインポート事業の開拓を行う。早期にEC化率10%を目指す。多田和洋・社長は「売り上げよりも内容にこだわった収益基盤を作るために、選択と集中を図っていきたい」と話す。
三陽商会にとっても今期(16年12月期)は「バーバリー」なしで1年を回す初年度だ。売上高は前期比79.0%の770億円、営業損益は20億円の赤字を見込む。後継ブランドの強化を最優先事項に位置付け、回復に力を注ぐ。