三越伊勢丹ホールディングス(HD)は26日、伊勢丹相模原店(神奈川県)と伊勢丹府中店(東京都)を2019年9月30日に、新潟三越を20年3月22日にそれぞれ閉店すると発表した。3店舗とも長期間にわたって赤字が続いており、回復が難しいと判断した。同社は今年3月に伊勢丹松戸店(千葉県)、昨年3月に三越千葉店を閉店。稼ぎ頭である都心の基幹3店舗(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)に経営資源を集中させていく。
伊勢丹相模原店は小田急線の相模大野駅から徒歩5分の場所で1990年に開業した。売り場面積は約2万9000平方メートルで、ピーク時の96年度には売上高377 億円だったが、2017 年度には195億円にまで落ち込んでいた。03年度以降、計104億円の減損損失を計上している。
伊勢丹府中店は京王線の府中駅前に1996年オープン。売り場面積は約3万2000平方メートルで、開店初年度に261億円あった売上高は17年度には148億円に縮小した。03年度以降の減損損失は計34億円に達する。
子会社の新潟三越伊勢丹が運営する新潟三越は、1907年創業の地場の呉服店が前身で、36年に百貨店に業態転換し、80年からは新潟三越百貨店として営業してきた。ピークの96年には売上高250億円まで拡大したが、2017年度は129億円とほぼ半減していた。同店が閉店すると、新潟県の百貨店は新潟伊勢丹の1店舗になる。
この数年、郊外や地方の百貨店の撤退が相次いでいる。16年以降の首都圏だけでもそごう柏店(千葉県)、西武筑波店(茨城県)、三越多摩センター店(東京都)、三越千葉店、西武船橋店(千葉県)、西武小田原店(神奈川県)、伊勢丹松戸店などが閉店に追い込まれた。多くは1970年代以降、郊外にマイホームを持ち始めた団塊世代とその家族をターゲットに開業した。だが、団塊世代は高齢化によって購買意欲が衰え、団塊ジュニア以降の世代はショッピングセンターやネット通販に消費の軸足を移しており、百貨店からは足が遠ざかっている。地方都市も事情は同じで、新潟三越のような歴史ある地元百貨店も顧客の高齢化に直面する。百貨店各社の大都市の基幹店は、富裕層や訪日客の増加で業績を回復させている一方で、その恩恵は郊外や地方には届いていない。