アダストリアの2018年3~8月期連結決算は、売上高が前年同期比2.6%減の1050億円、営業利益が同86.0%減の5億2900万円で、純損益は5億5400万円の赤字(前年同期は47億9400万円の黒字)に転落した。
「20年来の異常事態」。28日に行われた決算発表会で、アダストリアの福田三千男・会長兼社長は自社の経営状況についてそう形容した。「ニコアンド(NIKO AND...)」が売上高同11.1%増で気を吐いたが、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」といった他の主力ブランドが軒並み苦戦した。「特に4、5月は5ブランドを除く大半のブランドが2ケタ割れだった。これは上場する2年前、会社のシステムがダウンするトラブルで倒産寸前に陥ったとき以来の異常事態だった」と福田社長は嘆く。
要因はプロパー価格での販売不振を受けたセールの前倒し。同社は適正価格での販売を最重要課題として取り組んできたが、構造的な問題として、ショッピングセンター(SC)拡大に伴う過剰出店が一因であるとした。「新たにSCが1店舗できれば、商品だけが増えて結果的に余ってしまう。この現象を止めるには、アパレル企業が自ら出店をセーブしていくしかない。このままではデベロッパーがアパレル企業に利益を求める構造も厳しくなる。そういった意味で業界の大きな転換点が来ている」と語った。
一方で自らの反省点として、「商品企画や価格設定が、議論機会の喪失により失敗した」とした。同社は17年7月に本部オフィスを渋谷ヒカリエに移転したが「プレスルームがオフィスの外になったことで、サンプル商品を並べて商品の善し悪しを検討したり、社員が集まって価格を議論したりする場がなくなった」と分析。今年8月にはプレスルームをヒカリエ内に戻した。
ただ、8、9月で復調しつつあることを受け、通期の売上高2270億円(前期比1.9%増)、営業利益84億円(同67.8%増)、経常利益87億円(同60.3%増)、純利益44億円(同5倍増)という見通しは据え置いた。「ようやくスタートラインに立った。ここからだ」と下期で巻き返しを狙う。