尾花大輔率いる「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD以下、N.ハリ)」は10月16日、東京では8年ぶりとなるランウエイショーをアマゾン ファッションによるプログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」の一環で行なった。会場となった東京・天王洲の寺田倉庫にはファッション誌の編集長ら多くの業界人や一般招待客が訪れ、海外での経験を経た「N.ハリ」への高い期待が伺えた。
ショーは7月にニューヨーク・メンズ・コレクションで披露した2019年春夏コレクションに加え、古着を解体して再構築したブランドのルーツともいえるスペシャルピースで構成した。ニューヨークで打ち出していたエスニックとスポーツウエアを融合したスタイルから一変し、パターンやカラーをこれでもかといわんばかりに重ねる圧巻のハイパーミックス。ミリタリーやワークといった無骨な男らしさに軸足を置くクリエイションはそのままに、サイケデリックなネオンカラーやタイダイ染めの古着を用いた東京らしい力強いスタイルで、会場の期待に応えてみせた。「アンブロ(UMBRO)」や「ペンドルトン(PENDLETON)」とのコラボレーションアイテムの他、「アット トウキョウ」の特設ページで購入可能なアマゾンのロゴを用いたTシャツも目を引いた。
「N.ハリ」は、独自の世界観でスタイルを発信していた00年代から進化し、現在はデザイン性が強そうなアイテムでも、袖を通すとあらゆるテイストに違和感なく馴染む安定感が持ち味だ。この変化は、11年春夏シーズンよりコレクション発表の場をビジネスにシビアなニューヨークに移したことが関係しているのだろう。尾花デザイナーも、海外の経験を経て成長の手応えを感じている。「今回のショーでは海外の8年間で培った経験を会場全体で感じてほしい。この日のために作ったスペシャルピースと共に、今の日本でしかできない事を形にしたい。見ている人には新たな『N.ハリ』を感じてもらいたい」。
古着からスタートした「N.ハリ」らしいリメイクがブランドの過去だとすれば、安定感が増したプロダクトは現在、それらが融合した今回のコレクションピースはブランドが示した新たな未来。この過去・現在・未来のクリエイションを、ショーを通じて一本の線でつなぐことが「今の東京でしかできない」彼らの集大成だ。しかし尾花デザイナーはここで歩みを止めるわけでも、区切りをつけるわけでもない。凱旋ショーでチームの絆を深め、ブランドのさらなる進化を思い描いている。「ニューヨークに発表の場を移すと決めた時、スタッフ全員でコレクションに挑むという一体感を失う事はわかっていた。それに今、会社にいるほとんどのスタッフが東京のショーを経験した事がない。だから今回の『アット トウキョウ』への参加は、周りのスタッフが盛り上がっていたのが決め手。われわれにとっても新たなケミストリーを起こすいい機会だ」。ショー終了後も関わったスタッフに感謝を述べ、アフターパーティー開始の音頭を自らがとるというマイクパフォーマンスで会場を沸かせた。停滞気味だった東京のファッション・ウイークにも活力を与え、序盤のハイライトにふさわしい夜だった。