三陽商会は10月30日に開催した2018年1~9月期決算会見で、19年の巻き返しに向けた成長戦略を発表した。日本のクラフツマンシップを強みとした高品質なモノ作りと、高品質・高付加価値商品を買いやすい価格で提供する“ジャパン・プレミアム・ファッションカンパニー”を目指す。
そのための重点戦略として、ブランディングとマーケティングの強化を通じたプレミアムブランド化、デジタルトランスフォーメーションの推進、M&A・資本業務提携を通じた成長加速を掲げる。これらを実現するため、20年までに100億円超の投資を行う。
プレミアムブランド化を図るために、まずコーポレートブランド・オリジナルブランドを中心に直営店の出店を加速し、それに相応しいある程度の売り場面積を確保する。また、これまで抑制してきたブランディング・マーケティングに積極投資。11月以降の冬物最盛期には、同社の強みであるコートを打ち出す。社会的責任に応えるために10月に初披露した米カリフォルニア発のファッションブランド「アポリス(APOLIS)」を軸に、サステイナビリティーにも積極的に取り組む。いずれもラグジュアリーなイメージながら、手が届く価格帯で買えるプレミアムブランド確立のための手段だ。
さらに、AIの社会実装事業を展開するABEJA(アベジャ)との業務提携を発表した。12年創業のABEJAはAIを用いて転用の顧客動向を画像解析し、売り上げデータなどとひも付けることでブランドの店頭売り上げ向上を支援する。15年から小売流通業界向け店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を提供しており、三陽商会でも今年2月から「ラブレス(LOVELESS)」「マッキントッシュフィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」「エポカ ザ ショップ(EPOCA THE SHOP)」などの主要ブランドの旗艦店19店舗に導入を進めてきた。今後は店頭での接客やマーケティングなど複数の観点から仮説検証を行っていく。
三陽商会の岩田功・社長は「成長戦略の柱の一つとして、バリューチェーン全領域でのデジタル推進を掲げている。その中でもリアル店舗とオンラインを結ぶ購買体験の提供と購買履歴に基づきパーソナライズされた接客サービスは最も重要な施策だ。今回の取り組みは、当社のデジタル化をさらに推進し、お客さま価値の創造と最大化への近道になると考えている」とコメントした。
同社の18年1~9月期は、売上高が前年同期比6.5%減の413億円、営業損益が22億円の赤字(前年同期は28億円の赤字)、経常損益が22億円の赤字(同29億円の赤字)、三陽商会青山ビルなどの保有不動産を売却したことにより、純利益は15億円(同14億円の赤字)だった。夏の猛暑、9月以降の天候要因により、売上高が減少したが、粗利益の改善と販管費の削減を進めた結果、各利益面において改善した。
9月21日に12月31日付けでの希望退職者を募集すると発表したが、相当な数に上る見込みで、その影響についての発表は後日に控えた。通期業績予想は前回のまま、売上高が605億円、営業損失が16億円、経常損失が15億円、純利益が21億円。19年度は、売上高が620億円、売上総利益が305億円、営業利益が5億円を計画。販管費の引き下げを通じ営業利益の黒字化を目指す。