紳士服専門店の大手の青山商事とAOKIホールディングス(HD)が2018年4〜9月期決算で最終赤字に転落した。天候要因もあるものの、ビジネスシーンにおけるスーツ離れも業績に影を落とす。ITを用いた新しいタイプのオーダースーツ業態は注目を集めているが、従来からの主力である既製品のスーツは苦戦を強いられているようだ。
最大手の青山商事は、売上高が前年同期比3.0%減の1051億円、純損益が1億2300万円の赤字(前年同期は19億円の黒字)だった。「洋服の青山」などのビジネスウエア事業は、売上高が前年同期比3.4%減の724億円、営業利益が同74.4%減の6億5900万円。猛暑や豪雨などによる天候要因も打撃になり、既存店の売上高が同4.0%減、客数が同5.3%減に終わった。メンズスーツの販売着数は約71万着で、2年前に比べて約6万着減っている。
業界2位のAOKIホールディングスは、売上高が前年同期比2.1%減の839億円、純損益が10億円の赤字(前年同期は1億6300万円の黒字)になった。「AOKI」「オリヒカ(ORIHIKA)」のファッション事業は、売上高が同3.6%減の446億円、営業損益が15億円の赤字(前年同期は10億円の赤字)。ファッション事業の損失幅拡大と、カラオケルーム事業やカフェ運営事業などを含めた店舗の閉鎖および業態転換に伴う減損損失の増加により、最終赤字に転じた。
紳士服専門店にとって単価の高いメンズスーツは収益の柱。しかし、クールビズに限らず、年間を通じてオフィスのカジュアル化が進んでおり、さらに今年からはスポーツ庁が音頭をとってスニーカー通勤を推奨するようなった。家計に占める背広への支出は25年前に比べて7割も減少。しばらく前からメンズスーツは限られたプレーヤーが残存者利益を巡って競争する市場になっているが、そのパイ自体の縮小が加速している。
さらに近年は、ITを活用して値ごろ感のあるオーダースーツ業態を開発し、この市場に新規参入する企業も増えている。採寸スーツを用いたZOZOのプライベートブランドもその一つだ。価格が少し高い程度なら既製品スーツからオーダースーツに乗り換えるビジネスマンも若い世代を中心に増えている。
青山商事やAOKIホールディングスといった大手紳士服専門店も同様のオーダースーツ業態を強化するとともに、収益基盤がメンズスーツに傾斜しないよう事業の多角化を進めている。