「ブシュロン(BOUCHERON)」が、パリのヴァンドーム広場にある本店を12月5日にリニューアルオープンした。延床面積約1860平方メートルの4階建ての建物には、ハイジュエリーや時計の売り場に加え、同ブランドのデザインスタジオやワークショップが入っている。また、得意客をもてなすための宿泊施設を含む専用フロアがしつえられているのも大きな特徴だ。
今年160周年を迎えた「ブシュロン」が改装に乗り出した背景には、EC企業の隆盛による消費体験の変化と、それに伴ってブランドの世界観を“選ばれた”実店舗で伝えることの重要性が増したことがある。「ブシュロン」本店の向かい側には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が旗艦店を構え、近くのカンボン通りには「シャネル(CHANEL)」が最近オープンさせた旗艦店がある。
エレーヌ・プリ・デュケン(Helene Poulit-Duquesne)最高経営責任者(CEO)は、「1893年に創業者のフレデリック・ブシュロン(Frederic Boucheron)がここヴァンドーム広場26番地にブティックを開いて以来、この建物は当社の文化遺産であると同時に、パリとヴァンドーム広場の遺産でもあった。改装プロジェクトの早い段階で、これは商業的な案件ではなく、文化遺産のリノベーションとして扱うべきだと思った」と語る。そうした考えから、改装の責任者には歴史的記念物主任建築家のミシェル・グタール(Michel Goutal)を起用。以前の改築で設置されたと思しき吊り天井や中2階を取り壊して、光がたっぷりと入る広々とした空間を取り戻し、壁に隠されていたオリジナルの大階段を復活させた。また建物の北側の庭を囲むように新たなスペースが設けられた。庭に面したガラスの壁面は4階分にもなり、ここでも光がふんだんに入るよう設計されている。
内装デザインは、パリの5つ星ホテルである「フォーシーズンズホテル ジョルジュサンク(Four Seasons George V)」などを手掛けたピエール・イヴ・ロション(Pierre-Yves Rochon)が担当した。プリ・デュケンCEOは、「ここが私たちの家だと感じられる、友人を招いてくつろげるような雰囲気にしてほしいと依頼した」と言う。そのため、「ラリック(LALIQUE)」による凝ったシャンデリアと共に、のみの市やアンティーク店で見つけた家具が配されている。
友人の邸宅を訪れたような、よりパーソナルな雰囲気にしたいというプリ・デュケンCEOの意向を反映し、顧客は1階フロアのソファで紅茶やペーストリーなどを楽しむことができる。大理石の床には明るい緑色の葉が描かれたラグが置かれ、動植物をモチーフにした置物がそこかしこを飾っている。
2階はウオッチが陳列されているより男性的な雰囲気のライブラリーと、ブライダルやハイジュエリーを扱う部屋がある。後者は「サロン・ド・フィアンセ(Salon des Fiances、婚約者たちのサロン)」と呼ばれており、創業当時と同じく白と金色でしつらえられているが、「メゾン・マチュー(MAISON MATHIEU)」によるモダンなシャンデリアによって現代的なテイストとなっている。また顧客のサイズに合わせて商品をあつらえるための部屋もあり、こちらには青いベルベットのソファが置かれ、壁にはスケッチや絵が飾られた居心地のいい空間だ。
得意客のための専用フロアは3階にあり、建物の番地を冠して「Le 26」と命名されている。運営はリッツ・ホテルが請け負っており、森をテーマにしたダイニングスペースの他、バスルームを含めた宿泊設備が整えられている。なお、バスタブの横にある窓からはヴァンドーム広場の記念碑やエッフェル塔を眺めることができるという。
プリ・デュケンCEOは「改装されたこの建物は、当社の歴史と未来、そしてブランドの世界観を示している。ここは私たちの家だ」と締めくくった。