LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2018年12月通期決算は売上高が前期比9.8%増の468億ユーロ(約5兆8032億円)、純利益も同19.6%増の69億9000万ユーロ(約8667億円)と増収増益だった。また営業利益は同21.7%増の98億7700万ユーロ(約1兆2247億円)、経常利益が20.6%増の100億300万ユーロ(約1兆2403億円)の大台に達し、中国の景気減速が「ルイ・ヴィトン」などのラグジュアリーブランドに打撃を与えるのではという懸念を払拭した。
ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)は決算発表の会見で、「19年は幸先のよいスタートとなった。いずれ景気が減速することは避けられないが、それがヨーロッパで今年や来年に起きるとは思っていない。当社は今後も、ラグジュアリー市場におけるグローバルリーダーとしてのポジションを強化していく」と語った。
ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)LVMH最高財務責任者は、「中国での『ルイ・ヴィトン』の売り上げは第4四半期も引き続き好調で、主に中国本土での販売が伸びている。『ディオール(DIOR)』も同様のパターンで好調だ」とコメントした。
LVMHの力強い成長を支えているのは、主要事業であるファッション・レザーグッズ部門だ。前述したブランドの他に「ロエベ(LOEWE)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」などがあり、売上高は前期比19.2%増の184億5500万ユーロ(2兆2884億円)だった。ロゲリオ・フジモリ(Rogerio Fujimori)RBCキャピタルマーケッツ(RBC CAPITAL MARKETS)アナリストは、「同社で最も利益率が高いファッション・レザーグッズ部門が予想以上に伸びており、『ルイ・ヴィトン』や『ディオール』の市場シェアが拡大していることは株価上昇の好材料だ」と述べた。
アルノーCEOは、「好調な業績は、当社が擁するブランドに対する需要の高さの表れだ。アジア市場、特に中国が引き続き堅調で、今期は前期と比較してさらに力強く成長しており、需要に供給が追いつかないほどだ。『ルイ・ヴィトン』はアーティスティック・ディレクターとして、ウィメンズに二コラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)を、メンズにヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)を起用していることに加えて、セールをせず、アウトレットもないので、世界で最も需要が高いブランドの一つであり続けている。『ディオール』もそうしたブランドになることが目標だ」とコメントした。また、18年2月に「セリーヌ(CELINE)」のアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターに就任したエディ・スリマン(Hedi Slimane)による2つのコレクションについては「両方とも大成功を収めた」とし、「売上高の目標もいずれ達成するだろう。店舗デザインなどを一新し、5年以内に20億~30億ユーロ(約2480億~3720億円)になることを期待している」と語った。
LVMHが人気歌手のリアーナ(Rihanna)と新たなブランドを立ち上げるのではないかというウワサについては、「彼女は素晴らしい歌手で、私もファンだ」と答えるにとどめたが、同社傘下のケンドー(KENDO)とリアーナがパートナーシップを締結して開発し、同「セフォラ(SEPHORA)」などで販売されたメイクブランド「フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA)」について「素晴らしい成功を収めた」と評した。
その「セフォラ」などを擁する香水&コスメティクス部門の売上高は、通期で前期比9.5%増の60億9200万ユーロ(約7554億円)、「ブルガリ(BVLGARI)」や「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」などを擁するウオッチ&ジュエリー部門は同8.3%増の41億2300万ユーロ(約5112億円)だった。LVMHは18年12月に英旅行会社ベルモンド(BELMOND)を26億ドル(約2834億円)で買収しているが、今後もこうしたホスピタリティー事業で買収を実施するかどうかについては明言を避けた。