デンマーク発のコンフォートシューズで知られる「エコー(ECCO)」は2月20日~3月26日、伊勢丹新宿本店メンズ館地下1階紳士靴売り場で、革新的な技術を用いた「クアントゥー(QUANT-U)カスタマイゼーション・プロジェクト(以下、クアントゥー)」のサービス提供を行う。その後、松坂屋名古屋店でも同様のサービスを行う。
「クアントゥー」は、店頭で足を立体的に計測して約1時間で3Dプリンターによってシリコン製ミッドソールを製作し、人気定番商品“ソフト 8(SOFT 8)”に装着して提供するというもの。全13色で価格は7万6000円。
インソールのカスタマイゼーションサービスはこれまでもあったが、ミッドソールで、しかも店頭で計測・解析・製作を1時間で行うものは他にはない。「エコー」によれば、ミッドソールはシューズにとって歩行時の機能と履き心地の70%を占める心臓部で、ミッドソールをカスタマイズすることで歩行時や直立時に最高のパフォーマンスを提供するという。
計測は3D足型計測器で足首までを約30秒でスキャンした後、センサー付きのシューズを着用して30秒間トレッドミルを歩き、前後・左右・上下の加速度と圧力および靴内の温度と湿度を解析する。解剖学的スキャンとセンサーデータでデジタルの足型を製作する。
この画期的な技術は、シリコンを筆頭に物質科学分野の最先端技術を持つ米ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company以下、ダウ・ケミカル)と、ファッション業界での3D技術活用を支援する仏ダッソー・システムズ・ファッション・ラボ(Dassault Systems Fashion Lab)とのパートナーシップにより実現した。ダウ・ケミカルは「クアントゥー」用に開発した3Dプリンター用の液状シリコンゴムを開発。ダッソー・システムズ・ファッション・ラボは「エコー」と共同で一連の計測データから独自のアルゴリズムに基づく革新的な自己学習システムを開発した。
「エコー」イノベーションラボのパトリッツィオ・カルッチ(Patrizio Carlucci)代表は「靴の認識のパラダイムシフトだ。ビスポークシューズのようなあつらえ感を生み出しつつ、個々に最高の履き心地とを提供する。デジタル集積、動作解析に注力し、『エコー』の56年に及ぶ靴作りの経験をアルゴリズムに集約した」と言う。歩き癖によるアウトソールのすり減りがなくなるなど、歩き方の改善を望めるかと聞くと「われわれが提供するのは医療用の器具ではない。矯正するのではなく、最高のパフォーマンスを提供するものだ。ただし、(歩き癖で)すり減るアウトソールは減りが軽減するようなことはあるだろう」と語る。
犬塚景子エコー・ジャパン社長は「日本での実現に2年かかった。靴のカスタマイゼーションと言えば、素材や色、加工を選ぶというものだったが、足の動作を捉えてアルゴリズム処理をした世界に一つしかないミッドソールを提供するというのは未来の靴作りだ。ECが増えリアル店舗のトラフィックが減っている昨今、店舗におけるエンターテインメントの必要性を感じていた。このサービスは”エクスペリエンス”の重要性を表現したものでもある」と語った。