オンワードグループ(以下、オンワード)が展開するオーダーメードスーツ業態「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」が、コワーキングスペースのウィーワーク(WEWORK)内に出店するという新たな手法で米国市場に進出した。同ブランドは2017年10月にスタート。自宅や店頭で採寸し、注文から最短1週間で商品が届くというシステムが好評で、今期(19年2月期)は当初の予想を大幅に上回る5万3000着の販売と36億円の売上高を見込んでいる。
米国には、すでに類似の米D2Cブランドである「ノット・スタンダード(KNOT STANDARD)」や「マイスーツ(MY SUIT)」、そしてカナダの「インドチーノ(INDOCHINO)」などがあるが、オンワード樫山USAの村上潤社長兼最高経営責任者(CEO)は、「競合の多くはアパレルの経験がないテクノロジー企業などで、当社のような豊富なノウハウを持っていない」と自信を見せた。
ウィーワーク内の店舗として、ニューヨーク・マンハッタンのブロード・ストリート(ウォール街)と49丁目店、そしてボストンとワシントンD.C.で展開し、3月にはペンシルバニア州フィラデルフィア市にも出店する。他にはマンハッタンの同社オフィスにも拠点があり、21年までに米国内で100店舗を目指すという。「当社の傘下ブランドである『J.プレス(J.PRESS)』が東海岸を中心にしていて市場に関する知識があるため、まず東海岸で展開した。最初から西海岸に出店するのはハードルが高く、マーケティング費用もより多くかかってしまう」と村上社長兼CEOは説明する。またウィーワーク内に出店するというアイデアについては、「初めは路面店を検討したが、ニューヨークは賃料が非常に高い。ウィーワークであれば、施設使用料の他はラックや試着室を作るぐらいの投資で済む」とその狙いを語った。
実際、「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」の店内は数体のマネキンと鏡、そして来店者が座るためのソファが置かれている程度のシンプルな造りだ。そして基本的には予約をしてから来店するシステムなので、飛び入りの客はそもそも少ないという。集客はフェイスブック(FACEBOOK)やインスタグラム(INSTAGRAM)、グーグル広告(GOOGLE ADS)、ダイレクトメールなどの他、ウィーワークのネットワーキング・イベントも活用して行っている。
スーツは1着300ドル(約3万3000円)から、ハイグレードラインは平均700~800ドル(約7万7000~8万8000円)と日本と同レベルの価格帯で、最短10日間で提供する。現在はメンズのみの取り扱いだが、19年秋からはウィメンズを展開し、将来的にはシャツやコート、ブライダル、スポーツジャケットなども発売する予定。