ソウルで“シャネル ファレル”をお披露目するファレル・ウィリアムス JUSTIN SHIN / WWD (c) Fairchild Fashion Media
「シャネル(CHANEL) 」はファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)とコラボレーションしたカプセルコレクション“シャネル ファレル(CHANEL PHARRELL)”を、3月29日に韓国ソウルの旗艦店で先行発売した。同コレクションはその後4月4日から世界の複数店舗で限定的に販売される。コラボレーションの経緯や先日亡くなったカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏とのエピソードについて米WWDが聞いた。
WWD:2017年に「シャネル」とコラボレーションしたスニーカーを発売した際、限定500足に対して12万人と応募者が殺到した。それからカプセルコレクションまで拡大する話をはじめにしたのはいつ?
ファレル・ウィリアムス(以下、ファレル):あのスニーカーは「シャネル」がコレットをジャックしていたタイミングにおいて完璧な目玉商品だった。それはカール、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデント、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=ファッション・コレクション部門アーティスティック・ディレクター、そしてエリック・ファンダー(Eric Pfrunder)=ファッションイメージ・ディレクターから提案されたもので、1足のスニーカーの成功が、今回のカプセルコレクション製作という素晴らしい機会につながったのだと思う。
WWD:カールやヴィルジニーを含む「シャネル」チームとのデザインプロセスはどのようなものだった?
ファレル:プロセスは明快でシンプルだった。僕のクリエイティブ・ディレクターのシンシア・ルー(Cynthia Lu)と一緒にムードボードを作ってカールとヴィルジニーに見せた。そこから彼らは全ての部門を訪れることを許可してくれて、僕たちは使いたいアイテムや素材を選び、1カ月くらい経って「シャネル」はサンプルを見せてくれた。その迅速さには驚いたよ。
WWD:ブランドに新鮮でファレルらしい要素を取り入れたかった?
ファレル:コレクションのメインはユニセックスであること、その時点ですでに新しいアプローチだ。僕は「シャネル」のウィメンズの服を長年にわたって着てきたけれど、このコレクションをユニセックスにすることで、より多くの人がブランドに触れることになるだろう。ほんの少し色を加える、僕がしたことはそのくらいだ。
WWD:「シャネル」のアイコンからどんな要素を自身のデザインと組み合わせた?
ファレル:“シャネル ファレル”を提案したのはカールで、アイデアを描き起こし始めたのも彼だ。数分も経たない内に彼はいくつかの選択肢を描き出し、そこから実際に製品になったものもある。僕はアクセサリーに目がないから、ベルトからバッグ、サングラスまでお気に入りのアイテムに触れていった。「シャネル」とロゴの入ったビンテージのラウンド型サングラスを見せてくれたのを覚えているよ。とてもアイコニックなモデルで、今回複数のカラーでそろえられるというのは僕が常に望んでいたことであり、素晴らしいことだ。
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カプセルコレクション“シャネル ファレル”に合わせて制作したショートフィルム
WWD:日本のSFコミック「アキラ(AKIRA)」からインスパイアされたショートフィルムをコレクションに合わせて制作しているけど、その背景にあるコンセプトは?
ファレル:日本は僕の第2の故郷だ。「アキラ」は伝説的なアニメ映画で、そこに登場する東京の街中で見るようなカスタムバイクに僕は長年夢中になってきた。パリで「アキラ」を取り入れる提案をした時、エリックにクレイジーって言われると思っていたけど、驚いたことに彼はアイデアに賛成で、僕が自由に創作することを後押ししてくれたんだ。
WWD:これまで「シャネル」のキャンペーンやショーに登場し、楽曲提供もしてきたが、ファッションフィルムを制作するという新たなフェーズにおいてはどのようにアプローチした?ミュージックビデオを作るのとは別物だった?
ファレル:プロセスは簡単だったよ。僕のクリエイティブチームは必要なもの全てにアクセスできたし、そこからチームとして動くだけだった。ミュージックビデオとかなり近いものだったように感じている。サウンドトラックはふさわしいムードを演出するために何か違うものが必要だと感じていたら、トッド・トーソ(Todd Tourso)とフィー・ホリンガー(Phi Hollinger)が形にしてくれた。
WWD:「シャネル」とコレクションをデザインする中で何を学んだ?
ファレル:良い質問だね。数年にわたって多くのファッションプロジェクトを手掛けてきたけど、プロセスは大体同じだった。「シャネル」とのコラボで本当に感銘を受けたことはスタジオの働きだ。全ての部門のチームは僕が思っていたよりずっと小さかったけど、彼らの動きは素晴らしくて、言うまでもなく超効率的だ。これまで細部に気を配りながら、ここまで速くプロジェクトが進んだ経験はないよ。
WWD:コラボレーションが続く可能性はある?
ファレル:こんな話をするなんて考えたこともなかったくらいだから、誰にもわからない。いずれにせよ、カールが僕を信頼して機会を与えてくれたことをとても光栄に思うよ。
WWD:カールとの関係について、彼が教えてくれたこと、彼との友情から得た一番の宝物は何?
ファレル:仕事中毒のカールが自邸を見せてくれた時、「やるべきことがあるのに時間を無駄にしているように感じるからベッドルームは嫌いだ」と言っていたのが忘れられない。何年もの間、イベントやマーサーホテル(Mercer Hotel)でカールに会っていたけど、「シャネル」からブランドアンバサダーに指名されて、僕らはより多くの時間を一緒に過ごせることになった。彼はとてもシャープで才能にあふれていた。映像出演を初めて依頼された時、カールが僕のために衣装を描いてくれたことがあって、最終的に僕が着たのはスケッチそのものだった。常に正直で「シャネル」ファミリーと共に僕らを歓迎してくれたよ。
大根田杏(Anzu Oneda):1992年東京生まれ。横浜国立大学在学中にスウェーデンへ1年交換留学、その後「WWD ジャパン」でインターンを経験し、ファッション系PR会社に入社。編集&PRコミュニケーションとして日本企業の海外PR戦略立案や編集・制作、海外ブランドの日本進出サポート、メディア事業の立ち上げ・取材・執筆などを担当。現在はフリーランスでファッション・ビューティ・ライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を行う。