これまで好調に推移してきた東レの繊維事業が減速している。19年3月期の営業利益は前期比0.6%増の729億円とかろうじて前年並みを維持したものの、下期から失速。20年3月期は同4.0%減の700億円と3期ぶりの減益にとどまる見通し。減益の理由を日覚昭廣社長は「衣料市況が悪化しており、19年も前年の暖冬の影響で秋冬物商戦の苦戦を織り込んでいる」という。
19年3月期の売上高は、8月に上方修正し計画していた売上高1兆円に届かず、同6.6%増の9743億円にとどまった。東レはこの数年、ユニクロに代表される大手SPAとタッグを組んだ素材から縫製品の一貫生産&供給の急拡大を背景に、積極的な投資とM&Aを行ってきた。17年3月にはイタリアで350億円を投じ5年がかりで人工皮革の倍増設を行う計画を発表、同年6月には香港の大手ニット生地メーカーのパシフィック・テキスタイルに約560億円を出資していた。
だが、19年3月期は世界的な衣料市況の悪化で下期から失速。営業利益の四半期ごとの推移は、第1四半期が185億円(前年同期176億円)、第2四半期が233億円(同179億円)、第3四半期が185億円(同230億円)、第4四半期が126億円(同139億円)になった。また、韓国の繊維子会社では130億円の減損損失を計上。東南アジアの繊維子会社でも構造改革の遅れから減益を強いられた。
20年3月期にはイタリアと日本で高級人工皮革の増設やおむつ用のスパンボンドの増設などを控えており、売上高1兆円を計画している。