2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。
記者O:今シーズンはいつにも増してアート感が強く、好き嫌いが分かれそうだなという印象でしたが、どうでしたか?
記者M:サイコー!インスピレーション源になったチェ・ゲバラ(Che Guevara)のキューバスタイルは、着こなすのがメチャクチャ難しそうだけど、ゲバラみたいな革命の必要性を説いてる心意気が好き。しかも戦うのは、海洋汚染や人種差別、セクシャルマイノリティーなど、地球のあらゆる問題。1つにフォーカスするブランドは多いけれど、一度に全部、それをスーパーミックスっていう発想がフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)らしい。
記者O:特に帽子が凄かったです。さすがに商品化はしないでしょうけど(笑)。リッソはシーズンを重ねるごとに良くなってますね。就任当初は創業デザイナー時代の「マルニ」と比べられて否定的な意見も少なくなかったですが、ここ最近のコレクションを見ていると、自分のやりたいことを徐々に表現できているのかなと思っていました。そして今回のスーパーミックス。またひと皮むけましたね。ただ、ビジネス的にはどうなんでしょうか?
記者M:ウィメンズのメイン・コレクションとプレコレクションを見るとよくわかるけど、「マルニ」って、コレクションのムードを反映したコマーシャルピースが上手だからね〜。メンズもコレクションピースは強すぎて着づらい時もあるけれどコマーシャルピースがちょうどいい。「ポーター(PORTER)」コラボとか、マルニマーケットの効果もあって、顧客はかなり若返ったみたいだよ。
記者O:なるほど。若年層にはやや手が出しづらい価格帯かなとは思っていましたが、顧客の若返りは順調に進んでいるのですね。定番スニーカーの“ビッグフット”は街で若い子も履いているのを確かによく見かけます。今回のコレクションピースはまるで一点モノのアートのようだったので、どのようにコマーシャルに落とし込まれるのか楽しみです。でもMさんはきっとコレクションピースを着るんですよね(笑)。
記者M:ただ今回は、帽子やサンダル、バッグはもはやアートピースなカンジだよね(笑)。でも、「マルニ」流のチェ・ゲバラになって、ファッション界に革命を起こしたい(笑)。フランチェスコの洋服を着たら、そんな勇気が湧いてくるような気がします。デザイナーズブランドには、そんな“魔法”があるから、高いけれど一人でも多くの人に袖を通してほしいんだよね。
記者O:僕もその“魔法”は大好きです!ちなみに、フランチェスコの革命は9月のウィメンズコレクションへと続くストーリー仕立てになっているようですよ。最近の「マルニ」は着こなしのハードルが高すぎて少し遠ざかってましたが、久しぶりにチャレンジしてみようかな。
記者M:スキッパー襟のニットに開襟シャツのコーディネイトは、ピッティでも多かったコーディネートだし、チャレンジしやすそう。とは言え、シャツとニットのサイズ感はバラバラだから、お店で試着しながらスタッフとワイワイお話して選ぶのが楽しいかもね。実際、「マルニ」のメンズは、そんな買い方・売り方が多いみたい。表参道ヒルズの旗艦店オープンの時、フランチェスコにインタビューしたけれど、彼は本当に人間が大好きで、いろんな人と話をしたいタイプ。もちろん、彼とは直接話せるワケではないけれど、洋服を通じて、“フランチェスコ・ワールド”の住人であるスタッフと触れ合い、最終的に彼を知ることができるのは楽しいよね。つくづく、新しいタイプのデザイナーであり、ブランドに進化したなぁって思いました。