イタリアのファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」が7月9日に開幕し、イタリアを中心とした欧州企業608社が2020-21年秋冬向けのテキスタイルと服飾雑貨を提案している。会期は11日まで。
「ミラノ・ウニカ」はサステイナビリティー追求に舵を切って2年になるが、同見本市のサステイナビリティー・プロジェクトに参加する企業の数は前回に比べて22%増の150社になった。サステイナビリティーをテーマにしたインスタレーションに展示された製品数も同40%増の1004点を数え、多くの出展社を啓発しながら成長を続けている。
トレンドエリアでは、“エコロティカ(ECOROTICA)”をテーマに、刺しゅうやダメージ加工など手の込んだディテールの素材が並んだ。ステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)=アーティスティック・ディレクターは「現代を象徴する重要なテーマを融合した。地球の救いを渇望する“エコロジー”と、他者の関心を喚起したい、自分自身を好きになりたいという“エロチシズム”――2つの言葉を合わせて“エコロティカ”とした」と言う。加えて、「SNSの行動を観察することから始めた。“LIKE”の原理は、自分を見せることで自分を表現し、人から認められたい、評価されたいという欲求だと思う。それは自分自身に向かうエロチシズムのようでもある。SNSの中の彼らはワンショットのために生きていて、それにはドラマチックなもの、サーカスのようにシュールなもの、自然の中にいるものの3つが見受けられ、それらをキーワードにトレンドを分類した」と語る。
エコロティック・ドラマ
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デヴィッド・リンチ(David Lynch)やリドリー・スコット(Ridley Scott)、1920年代のサイレント映画やマン・レイ(Man Ray)などからインスピレーションを広げた。官能的で洗練されたクローンをイメージしており、光沢感の強いオーガンジー、レイヤードによるイヴニング用ブロケード、繊細なランジェリーディテールなどをポイントに素材をセレクトした。
エコロティック・サーカス
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リュック・ベッソン(Luc Besson)やティム・バートン(Tim Burton)の映画の世界をイメージしながら、同時に「クレイジーホース」や「シルク・ド・ソレイユ」の世界の雰囲気をミックスしたという。メンズウエアでは極めて薄いポプリンのレースや不釣り合いに大きな刺しゅうなどを用いるイメージ。
エコロティック・エデン
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キマイラやケンタウルス、食中植物、半分昆虫で半分人間のヒューマノイドなど、超自然の世界をイメージした。ここでのエロチシズムは、みずみずしい自然と完璧に共生するパワフルなアスリートの肉体だと言い、スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)や宮崎駿の世界からインスピレーションを広げたという。オーガニックなジャカード織り、羽根、ファーなどがキー素材だ。
「イタリア素材メーカーの生きる道はクリエイティビティーとサステイナビリティーを両立させること」
「すべては強くてダークなものにつながっている。それはみんなどこかで守られたいと思っているからで、そういうときは暗い色を選ぶでしょう?実はそれってSNSの中にある、ある種偽物の世界とは対極にあるもの。写真を撮るための服ではなく、日常を生きるための服で、刺しゅうやダメージ加工など手を加えることで強さを添えるイメージだ。また、官能性は薄さや軽さ、透明感で表現している」という。しかし凝ったディテールを加えることで価格は高騰する。「むしろそれが狙いだ。われわれは中国の素材メーカーと価格競争をする気はさらさらない。イタリアの素材メーカーの生き残る道は、クリエイティビティーとサステイナビリティーを両立させることだ」と語気を強める。
「実はシーズンが始まる前に出展社には、各社の定番生地に装飾や加工を加えることで新たな表現ができないか、と持ちかけた。今ある商品で、新しいものを作ること――これも今すぐできるサステイナブルな行動だと考えたから」と明かした。