パリ・マレ地区にあるアズディン・アライア(Azzdine Alaia)財団で、アライアの回顧展「別の視点から見たファッション タチ コレクション(ANOTHER WAY TO LOOK AT FASHION TACHI COLLECTION)」が開催されている。6月30日から始まったパリ・オートクチュール前日に内覧会が行われた。同展は、アライアの1991年春夏コレクションにフォーカス。パリのディスカウントショップ「タチ(TATI)」のシンボルともいえるヴィシーチェックを採用したこのコレクションはまさに、ハイファッションとストリートの融合を象徴するものだ。今では「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「シュプリーム(SUPREME)」を筆頭に、「H&M」と「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」、「ユニクロ(UNIQLO)」と「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」などハイブランドとストリート、ファストファッション、量販店のコラボレーションは当たり前だが、アライアは今から約30年前にそれを試みている。アライアがこのコレクションを製作するきっかけとなったのが、アメリカの画家ジュリアン・シュナーベル(Julian Schnabel)との交友だ。シュナーベルが「タチ」のヴィシーチェックを使って絵を描きたいと言ったのがそもそもの始まりだった。
「タチ」といえばピンクのヴィシーチェックのショッパーがトレードマークで、店内はいつもディスカウント商品をあさる人々であふれており、移民の多いパリの一面を感じるショップだ。チュニジア出身のアライアは帰省する際に、たくさん物を詰め込んだ「タチ」のバッグを携えたチュニジア人の姿を目にしており、彼にとって、ピンクのヴィシーチェックは平等主義を表すものであった。「タチ」にコラボレーションの話を持ち込んだアライアは創業者がチュニジア人だと知り、ピンクに加えブラックとブルーのヴィシーチェックをアライアの専用で追加注文し、「タチ」の店舗で販売するバッグとTシャツ、エスパドリーユを自分も製作すると告げた。アライアは、「ディスカウントショップの代表格である『タチ』に私の名前と、オートクチュールの世界を融合させるのはエキサイティングなこと。ファッショナブルな服を買えない『タチ』の顧客にクオリティーの良いものをデザインしたかった」と述べている。このコラボレーションは、アライアの温かい人柄と幅広い視野、革新的な思考力の現れだと言ってもいいだろう。
アライア財団では2020年1月5日まで、同コレクション展とシュナーベルの絵画、そして、ファッションイラストレーターのティエリー・ペレズ(Thierry Perez)によるイラストなども展示している。
■AZZDINE ALAIA ANOTHER WAY TO LOOK AT FASHION THE TATI COLLECTION
日程 :7月1日~2020年1月5日
時間:11:00~19:00
場所:ASSOCIATION AZZEDINE ALAIA
住所:18, rue de la Verrerie, 75004 Paris