TSIホールディングスの2019年3~11月期は、売上高が前年同期比7.2%増の1258億円、営業利益が同41.3%減の19億円、純利益が同87.8%増の48億円だった。下期(9月~)に台風などの災害や増税後の反動減、暖冬の影響で秋冬物の消化が鈍り、セール販売を強いられて利益を押し下げた。増収には18年10月に買収した上野商会が、最終増益には19年5月のキャロウェイアパレルの売却益が寄与した。
前年同期との比較が可能なブランドの売上総利益は同4%減。暖冬や増税が、稼ぎ頭の「ナノ・ユニバース(NANO・UNIVERSE)」を直撃し、在庫過多で値引き販売を強いられ、売上高は前年並みを維持したが売上総利益率が同3.5ポイント低下した。一方、「顧客がしっかりとついているブランドは環境要因に関係なく売れた」(上田谷真一社長)。30周年の「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」は売上高が同4.3%増で売上総利益率が0.6ポイント低下、「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」は売上高が同1%減、売上総利益率が同0.3ポイント低下に踏みとどまった。端境期に合わせた羽織物などのMDも奏功した。
同社は当期の不振を受け、ビジネスモデルの転換を加速する。「(19年秋冬は)暖冬を見込んでアウター類を1~2割減らすなどしたが、(需要の落ち込みに)追いつかなかった。今後はさらに在庫の圧縮を進め、良質なものを少量作るビジネスで勝負する。店舗で欠品すればEC在庫を引き当ててカバーする。そのためには、自社EC比率を高めて会員化を促し、店舗とECの双方で買い物をする客を増やす」。
プロパー(正価)販売の強化も進める。アルページュの「ジャスグリッティー(JUSGLITTY)」や「マーガレット・ハウエル」などでは、主にアウター類の値引き販売の対象商品を大幅に減らしているが、この方針を他ブランドにも波及。「売り上げの帳尻合わせのためのセールはしない。業界全体で足並みがそろえば理想だが、当社は先駆けて進めていく」。また、事業ごとに分断されている生産や運送なども集約する。「物流や調達の合理化、海外展開などを進める上で、一緒にやれるところはやっていく」考えだ。