1月22日に仏パリのシャトレ座(Theatre du Chatelet)で、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)による最後のオートクチュール・ショーが開催された。ゴルチエのショーはファッションとゲストパフォーマーたちが融合したエンターテインメント性溢れるものとして知られているが、現在67歳のゴルチエはこれを最後にランウエイから退く意向で、今回のショーは彼の50年間の歴史を振り返るような内容となった。
ショーでは1時間以上にわたって、モデルやミューズ、ゴルチエの友人に至るまで多くの人物が彼の過去のコレクションを取り入れた230以上のルックを身にまとってステージに登場した。セーラー服、コルセット、タキシード、そしてトロンプルイユ(だまし絵)の技法を用いた作品など、ゴルチエのシグネチャー的作品がランウエイを彩った。
今回のショーにはエリン・オコナー(Erin O’Connor)、ココ・ロシャ(Coco Rocha)、ジェイド・パーフィット(Jade Parfitt)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)、リリー・マクメナミー(Lily McMenamy)、カレン・エルソン(Karen Elson)、ナ・クリーブランド(Anna Cleveland)、エステル・ルフェビュール(Estelle Lefebure)、ノエミ・ルノワール(Noemie Lenoir)、ウィニー・ハーロウ(Winnie Harlow)、そしてブランドの前ミューズでありクチュール・ディレクターも務めたファリーダ・ケルファ(Farida Khelfa)までもが登場した。
最も大きな喝采を浴びたのはゴルチエのショーに何十年もの間参加し続けてきたタネル・ベドロシアンツ(Tanel Bedrossiantz)で、最後のショーであっても落ち込む様子はなく、右肩に雄鶏を付けたレザージャケットを着てランウエイを闊歩した。
ベドロシアンツを筆頭に、ボーイ・ジョージ(Boy George)、ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)、パリス・ジャクソン(Paris Jackson)、女優のベアトリス・ダル(Beatrice Dalle)、ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)、ファニー・アルダン(Fanny Ardant)、シンガー・ソングライターのカトリーヌ・ランジェ(Catherine Ringer)、歌手のミレーヌ・ファルメール(Mylene Farmer)、元祖ディスコクイーンのアマンダ・リア(Amanda Lear)、そして90年代にゴルチエと共にテレビ番組「ユーロトラッシュ(Eurotrash)」を手掛けた司会者のアントワーヌ・ドゥ・コーヌ(Antoine de Caunes)らもステージに登場した。
オーディエンスにはピエール・カルダン(Pierre Cardin)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)、クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)、イザベル・マラン(Isabel Marant)、ジュリー・ドゥ・リブラン(Julie de Libran)などの有名デザイナーたちの姿もあり、ゴルチエの最後のショーを客席から見守っていた。
ショーはウィリアム・クライン(William Klein)による1966年のフランス映画「ポリー・マグーお前は誰だ?(Who Are You, Polly Maggoo?)」に登場する葬儀のシーンから始まり、ボーイ・ジョージがエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の楽曲「Back to Black」を熱唱した。80年代初頭に発表され、マドンナ(Madonna)が90年に行った「ブロンド・アンビション・ツアー(Blonde Ambition Tour)」で着用して有名になった円すい形のブラをほうふつとさせる棺が登場するなど、葬儀シーンといえどもゴルチエらしくおふざけのある演出に会場は沸いた。
フォン・ティースが着用したヌードカラーのサテンのベルト付きコルセットや、デ・パルマが着用した黒の短いビスチェドレスとマンティラ、ジジ・ハディッドのセーラーのトップスに白のパンツ姿や、ベアトリス・ダルが黒のネグリジェにサテンパンツ姿で行ったパフォーマンスなど、ショーは数々のハイライトで彩られた。
ゴルチエが最後の挨拶に現れると、会場は総立ちの大歓声に包まれた。ボーイ・ジョージ率いるキャストの合唱と、男性モデルらによるゴルチエの胴上げによって最後のショーは大きな盛り上がりとともに幕を閉じた。
ゴルチエは「とてもハッピーで感動的、よい気分だ。古くから知る多くの愛するモデルたちがこのショーに特別に参加してくれた。みんなと再会したことでたくさんの思い出がよみがえったと同時に、全員で新たなショーを創り出すことができた」と語った。
ゴルチエはランウエイからは引退するが、デザイナーとしての活動を完全にやめるわけではないという。ロシアのモスクワとサンクトペテルブルクでは「ファッション・フリーク・ショー(Fashion Freak Show)」と題したキャバレーショーを行っているし、「Gaultier Paris(ゴルチエ パリ)」は新たなコンセプトで継続していくとしている。
ゴルチエは「ファッションに携わるのはやめられないから、何かほかのことをするよ。クチュールは死んでいない。あの葬儀はおもしろくて新たな創造性もあった。だから、全く死んでなんかいないのさ」と語っている。