渋谷パルコの9階に、10代に向けたクリエイティブ教育のためのスペース「GAKU」が4月にオープンする。「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」デザイナーで、ファッションスクール「ここのがっこう」を主宰する山縣良和がディレクターになり、音楽、建築、映像、料理、デザイン、アートなど、多様なジャンルのクリエイターがクラスを開講。「GAKU」と隣接する区画に入る宇川直宏主宰の音楽&カルチャー配信スタジオ「SUPER DOMMUNE」などとも連動し、「(既存の教育手法では)創造性が育ちづらい」「単純労働がAI(人工知能)に置き換わった時に何ができるか」といった問題意識のもと、日本の教育に切り込む。運営主体は、東京・横山町の老舗現金問屋、丸太屋の子会社であるログズ。
山縣自身が、「ここのがっこう」のより若い世代に向けたファンデーションクラスを月に3回開講する他、編集者の菅付雅信が週1回「東京芸術中学」を開く。「東京芸術中学」はゲスト講師にアーティストの会田誠、ダンサーの菅原小春、スタイリスト北村道子、音楽家の渋谷慶一郎、建築家の田根剛、「アンリアレイジ」デザイナーの森永邦彦などを予定している。また、カルチャーメディアなどを運営するCINRAによるオンラインラーニングコミュニティ「インスパイア・ハイ」のクラスや、音楽レーベル運営者などからなるディレクションチーム、CANTEENらによるヒップホップ音楽のクラスなども開講する。
開催期間や参加授業料はクラスによって異なる。「東京芸術中学」は1年間(全42回)で30万円、一方で「通期ではなく1回ごとの参加費で受講できるクラスもある」(運営事務局担当者)といい、10代を幅広く巻き込むことを意識。また、クラス自体は18~19時前後までとし、それ以降の時間は受講者以外にも場を開放して、クリエイティブに興味を持つ層を若者、大人世代共に取り込んでいく。4月の開講に向けて順次受講者の募集を行っていくが、2月3日~3月31日には「GAKU」を無料自習室として10代に開放し、SNSなどを通して認知アップを目指す。
運営のスキームとしては、ログズが同区画をパルコから借り、クラスの開講者から開講時間・期間に応じて収入を得る形。ログズは、山縣がもともと行ってきた「ここのがっこう」に開催場所を提供したり、親会社の丸太屋が運営するホテルの制服デザインに東京の若手デザイナーを起用したりするなど、クリエイティブ支援に力を入れている。「『GAKU』は面白いプロジェクトだが、正直なところマネタイズは難しい。しかし、(利益度外視の慈善事業ではなく)ビジネスとしてやっていきたい。ラグジュアリーブランドなどとも協業を模索し、一緒に何かできないか話し合いを進めている」と武田悠太ログズ社長。
渋谷パルコは、渋谷区の都市再生特別地区の認可を受けて再開発を行ったため、「施設を通した公共貢献が求められる。長谷部健・渋谷区長とも話す中で、“SDGs”の4番目の項目でもある教育という切り口で公共貢献していくことに決めた」と、渋谷パルコのリニューアルを指揮した泉水隆パルコ常務執行役。9階には「GAKU」「SUPER DOMMUNE」以外に、渋谷区主体で運営する「渋谷未来デザイン」も入っており「それぞれと連携して教育にアプローチしていく」と続ける。3月7日に、3区画連動でのイベントを予定している。