ZOZO澤田宏太郎社長兼CEOの新年は、ほろ苦い幕開けだったはずだ。昨年9月12日に突然トップのバトンを創業者の前澤氏から渡された澤田社長にとって、19年10〜12月期はいわば経営者としてのデビュー戦。しかし暖冬と増税、さらには前澤氏の“置き土産”とも言える「ZOZOチャンピオンシップ(PGAツアー)」と「バスキア展」の大出費まで重なり、営業利益は前年同期比で42.0%減と、ZOZOにとって歴史的とも言える大幅減益を強いられた。1月31日のアナリスト向けの決算発表で“MORE FASHION”と“FASHION TECH”という経営の新基軸を宣言し、高感度ブランドの導入やテクノロジーを活用したリアル店舗支援などの方針を打ち出したものの、アナリストからは減益の理由となった暖冬への対応や具体的な巻き返し策に質問が集中した。
商品取扱高(GMV)の拡大に邁進してきた創業者の前澤流経営から、ZOZOの原点であった”ファッション”を軸に、リアル店舗支援なども絡めて再成長を目指す澤田社長の新方針は、中長期的には間違っていない。大手アパレルやセレクトショップなどの多くのファッション企業にとって“ゾゾタウン支店”は、旗艦店をもしのぐ圧倒的な一番店でありながら商品単価の下落が続き、「在庫処分のための、もはやアウトレットになっている」(ある有力セレクト)と悩みの種になっていたからだ。
マスカスタマイズテクノロジーを軸にしたプライベートブランド「ZOZO」に加え、会員制割引サービス「ZOZOARIGATO」など、従来の枠組みにとらわれないカリスマ前澤氏による革新的なアイデアや施策は注目を集める一方で、多くのファッション企業の離反や反発を招き、カリスマならではのトップダウン方式は現場の士気の停滞につながっていた。就任からわずか3カ月で新基軸を打ち出し、社員の士気を鼓舞し続ける澤田社長ら現経営陣の奮闘ぶりには目を見張るものがある。
とはいえ、10〜12月期の商品取扱高はわずか0.3%増にとどまり、4〜12月期の粗利益率は34.4%から33.1%と1.3ポイント低下した。粗利率の低下は上昇するコストをGMVの増加で吸収できなかったという点で痛い。ZOZOは今年2月と10月に大型物流倉庫を新設する予定で、物流施設は人件費の高騰も続いており、今後の商品取扱高の成長の鈍化は採算の急激な悪化を招きかねない。アナリストからは「これまで暖冬や増税の影響を決して認めてこなかったにもかかわらず、業績悪化の理由に認めたことは残念だ」という厳しい指摘も飛んだ。
ZOZO澤田社長は“MORE FASHION”という方針を堅持しながら、これまでの成長を期待する投資家たちの期待にも応え続けなければならない。昨年12月にオープンした「ペイペイ(PAYPAY)モールZOZO支店」の好調は明るい材料だが、それを上回る成長や期待感を“ゾゾタウン本店”が見せる必要がある。澤田社長は「テクノロジーを絡めることで、ラグジュアリーブランドの導入や革新的なリアル店舗支援ツールの開発などやれることは多い」と語る。2020年をZOZOイヤーにできるか。今こそZOZOの真価が問われている。