ファッション

20周年を迎えた「マウジー」 高級デニムラインを国内に“逆輸入”する理由

 バロックジャパンリミテッドの「マウジー(MOUSSY)」は、2020年に設立20年を迎え、ブランドとしてさらなるステップアップを目指す。今秋には、これまで海外限定で展開してきた高級デニムライン“マウジー ヴィンテージ(MOUSSY VINTAGE)”を国内にも導入。東京・原宿のブランド複合型旗艦店「ザ・シェルター トーキョー(THE SHEL’TTER TOKYO)」も改装し、“マウジー ヴィンテージ”含め、「マウジー」のさまざまなラインがそろう場所として訪日外国人客にもアピールする。節目を迎えた「マウジー」は今後、どのように変わっていくのか。村井博之社長と深澤哲人副社長兼営業統括本部長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):この間の「マウジー」を振り返ると?

村井博之バロックジャパンリミテッド社長(以下、村井):19年からは尻上がりによくなってきている。しばらく不安定な時期が続いたものの、“膿出し”が終わってここ2年ほどは安定成長に入った。国内での売上高は約120億円の規模だ。グローバルでブランドを売っていくことには自信があるが、正直、日本市場で100億円の規模を維持できるかについては、自信が持てない時もあったが、ブランドが成長を続けながら無事に20周年を迎えられたことは望外の喜びだ。

WWD:高級デニムライン“マウジー ヴィンテージ”は、国内に先行して海外で投入してきた。その立ち上げ意図は?

深澤哲人副社長兼営業統括本部長(以下、深澤):16年に立ち上げた“マウジー ヴィンテージ”は、価格帯は3万~5万円。日本のデニム生地を使い、縫製も加工も日本という、メード・イン・ジャパンを追求したラインで、競合は、いわゆる“プレミアムデニム”と呼ばれるような海外のジーンズブランド群だ。立ち上げの背景にあったのは、「マウジー」ブランドのイメージを全体的により高めて、これまでとは出店立地も変えていこうという考えだった。日本ではこのタイミングでの導入となったが、先行する欧米では、米国の「サックスフィフスアベニュー」「ニーマンマーカス」「バーグドルフグッドマン」、英国では「ハロッズ」などの百貨店に卸販売している。中国には、19年に上海、北京、広州に“マウジー ヴィンテージ”の店舗をオープンした。

村井:海外の卸先は日本以上に現実主義。売れれば目立つ場所に置いてもらえるし、売れなければ隅に追いやられる。そんな中でもセールをせずに売れているのは、日本の素材、製造、加工にこだわり、メゾンブランドに引けをとらないようなクオリティーを目指して差別化できているからだ。広告宣伝にはほとんどコストをかけず、その分を商品開発費などに充ててきた。確かな品質やデザインが現地のインフルエンサーの目に留まり、口コミでじわじわ人気が広がっているようだ。

WWD:なぜ海外での販売が先行し、日本には逆輸入するような形になったのか?

村井:日本のファッション市場が、世界の中で特殊になってきてしまっているからだ。ファッショントレンドとして、欧米と中国は共通する部分があるのに、日本だけガラパゴス化しているということを強く感じるようになった。加工にこだわった高級デニムは日本に市場がないので、海外でまずは始めようとなった。しかし、訪日外国人客が増える中で、「日本発のブランドなのに、日本では“マウジー ヴィンテージ”を売っていないのはなぜだ」と今では言われてしまう。日本のファンからの要望もある。それで遅ればせながら、日本でも秋から販売することにした。

深澤:国内外で、「マウジー」のポジショニングが違うという背景もある。中国は市場が細分化されてないだけにラグジュアリーブランドも入っているモールに「マウジー」が出店していることもあるが、日本は渋谷109発の駅ビル・ファッションビル向けのブランドというイメージが今も強い。店舗の面積も中国に比べて日本は狭い。今後は中国と同様、海外ブランドとも競合できるような“グローバルトレンド”のゾーニングに持って行きたい。“マウジー ヴィンテージ”を導入するのもその一環だ。

WWD:より高価格帯のプレミアムなブランドへとゾーンを上げていく?

深澤:一律に上げていくというのではなく、「マウジー」の中でより細かくラインを分けていくようなイメージだ。現状では「マウジー」のメインラインや“マウジー ヴィンテージ”に加えて“スタジオウェア”、30代が中心対象のカプセルコレクションなどをブランド内で展開しているが、それぞれのラインで立地に合わせて単独出店していってもいい。また、“マウジー ヴィンテージ”にもメンズはあるが、メインラインでも秋からメンズを始める。それら全てのラインをまとめた旗艦店のようなショップを出す際は、国内なら男女複合のセレクトショップが入っているようなゾーニングをイメージしている。グローバルでも、市場に合わせてラインを切り出したり、業態を選択したりしてさまざまなチャンスをうかがっていきたい。

WWD:“マウジー ヴィンテージ”の来秋の国内の導入店舗はどこになるのか?

村井:東急プラザ表参道原宿の「ザ・シェルター トーキョー」は、東京五輪までは多数のポップアップを予定しているが、五輪後にリニューアルを予定している。そこで“マウジー ヴィンテージ”が買えるようにするとともに、自社ECでも販売する。来秋の販路はまずこの2つだ。「シェルター」のリニューアルにあわせて、「マウジー」のメンズや、名前を変えてあらためてローンチするカプセルコレクションも導入する。改装後の同店の屋号については現在検討中だ。

WWD:「マウジー」を細分化していくことで、ブランドが分裂してしまわないか?

村井:フルラインアップの店を急拡大するという考え方ではない。“マウジー ヴィンテージ”は、まず日本で買える場所をしっかり設けるというのが第一だ。「マウジー」というブランドに限った話ではなく、当社全体としても、約100億円規模の百貨店や海外への卸を行うハイエンドな事業と、約200億円規模の祖業でありかつて“マルキュー系”とよばれたゾーン、そして郊外モールも含めたマスマーケット層を狙う約300憶円規模の事業という幅の広い3つのビジネスを行っている。この3つがあることで、それぞれの事業分野から学ぶことは多い。1つのターゲットだけに向けたビジネスをしていたら、発想が狭まってしまう。国内で120億円という「マウジー」の規模は最も実験がしやすいともいえる。ここでの試行錯誤を、SC向けの「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」のテコ入れにも生かしていく。

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