1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。
今日のニュース:P.7『アパレルテックのシタテルが新事業』
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読み解きポイント:「簡単に服が作れて、嬉しいのは誰?」
ニュースのポイント
シタテルは、取引やワークフローの円滑化を目指す「シタテル クラウド」のβ版やユニホームのカスタムサービスである「シタテル カスタム」、D2Cブランドの業務をサポートする「シタテル スペック」の3機能のスタートを発表した。「シタテル スペック」はβ版から19年12月にアップデートし、初期費用不要で受注生産と販売を一体化。導入事業者が考案した衣服企画のサンプル生産から商品撮影、EC上での受注販売まで行う。
Azuはこう読む!
「シタテル」はパターン作成から縫製工場の選定、検品から納品まで、衣服生産の全行程をサポートするサービスとして2015年にスタートしました。ちょうど15年は日本でも「ファッションテック」という言葉が使われ始めた頃で、デジタルを活用したサービスや製品を手掛けるベンチャー企業が続々誕生した年です。
そして今回発表された生産一体型コマース「シタテル スペック」のベータ版がスタートしたのは18年。「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ナノ・ユニバース(NANO・UNIVERSE)」などの大手アパレルブランドによる試験導入やクールジャパン機構による大型出資を経て、無事20年2月に正式スタートしたという流れです。
プレスリリースによると、ターゲットとするユーザー層は「デジタルネイティブのDNB向け」ということですが、みなさん「DNB」ってピンと来ますか?「D2C」(Direct to Consumer)は聞き慣れた言葉だと思いますが、「DNB」も同じような感じです。すごくざっくりいうと(笑)、Digital Native Brandの略で、その名の通りデジタルネイティブ=データに基づいて商品開発をしたり事業を進めたりしていくブランドのこと。
また新しい言葉が出てきましたね。これ以上無理です、覚えられません!という方もご安心ください。何をやっているのかを把握できていたら言葉の定義なんて関係ないので、「D2C」と「DNB」の違いとか、「既存の通販ビジネス」と「D2C」の違いとか、正直「スパッツとレギンスの言い換えと同じかな……」くらいに思っているので、深く考えるのはやめました。だってDirect to Consumerって言っているのに、資金調達した瞬間に「卸やります!」って宣言しているブランドもあったから、もう何も誰も信じられなくなったんだもの……。
さて、話が逸れましたが今回考えたいのは「アパレルへの参入障壁がどんどん低くなっていくのは良いこと?悪いこと?」です。生産・販売におけるデジタル技術の応用やSNSのおかげで「誰でも洋服が作れて売れる時代」になったのは確か。ですが、昨年からよく耳にする「サステナブル」の面で考えると、果たして洋服が増え続ける環境は「良し」といえるのか?とも思ってしまうのです。もちろん善悪の二元論で語れるものではないし、決してこのサービスを批判しているわけではありませんが、誰でも服が作れる必要ってあるのかな?と。
今は「D2C」という言葉だけが一人歩きして、「とりあえずファンビジネスやブランドビジネスをやるなら参入障壁が低いアパレルだ!」という感じすらしています。「とりあえず」で始めたブランドが1年続くなんて思えないし、現に「インフルエンサーブランド」なるものは瞬間的に生まれては消えていく運命に……。「顧客との接点を増やしエンゲージメントを向上させること」を目的に衣服を作っているのだとしたら、環境に負荷をかけまくる「服の生産」ではなく他の方法にした方がよっぽど地球に優しいよなぁ、と思います。
アパレルへの参入障壁が低くなっていくのは良いことか、悪いことか。みなさんどうお考えですか?
Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne