「オメガ(OMEGA)」や「ブレゲ(BREGUET)」などを擁する世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の2019年12月通期決算は、売上高が前期比2.7%減の82億4300万スイスフラン(約9314億円)、営業利益が同11.3%減の10億2300万スイスフラン(約1155億円)、純利益が同13.7%減の7億4800万スイスフラン(約845億円)の減収減益だった。
スウォッチ グループは地域ごとの数字を開示していないが、19年下期には香港での売り上げがおよそ2億スイスフラン(約226億円)減少したという。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例への大規模な抗議デモの長期化によって香港の小売業は大きな打撃を受けており、同地域で90以上の店舗や売り場を展開する同社もその影響を受けた。ほかの国や地域の業績は好調で、香港を除いての19年下期の売上高は現地通貨ベースで前年同期比5%増だった。
同社は、「地政学上の不透明感が続き、米ドルやユーロに対してスイスフランが強含みで進行するなどの逆風があったにもかかわらず、19年は高い業績を上げることができた。為替レートの懸念が引き続きあるものの、20年も健全な成長を見込んでいる」とコメントを発表した。
しかし同社が決算を発表した1月30日の時点では、新型コロナウイルスの影響はまだそれほど見られていなかったため、今後見通しが修正される可能性もあると業界アナリストらはいう。実際、同社は3月4~6日にスイス・チューリヒで展示会「タイム・トゥ・ムーブ(TIME TO MOVE)2020」を開催する予定だったが、その中止を2月3日に発表している。同展示会では「オメガ」や「ブレゲ」「ハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)」など、同グループの上位6ブランドをバイヤーやメディア関係者に披露する予定だった。
米投資銀行バーンスタイン(BERNSTEIN)のルカ・ソルカ(Luca Solca)=アナリストは、「スマートウオッチの台頭で、同じ価格帯のエントリーモデル市場の競争が激化している。しかし、スウォッチ グループが抱える『ブレゲ』『ジャケ・ドロー(JAQUET DOROZ)』『ブランパン(BLANCPAIN)』などの高価格帯ブランドも好調とは言い難く、エントリーモデルの売り上げが減少した分を埋めるには至っていない。こうした中、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、同社の20年上期の売り上げへのさらなる圧力となるだろう」と語った。