リーバイスジャパンは21日から、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」から64サイズをそろえたジーンズの販売を開始する。ZOZOが体型計測スーツ“ZOZOスーツ”で蓄積したビッグデータを活用し、顧客は自分の身長と体重を入力するだけで、自分にぴったりのジーンズをマッチングできる。ジーンズはメンズが“512 スリム・テーパーフィット(SLIM TAPER FIT)”、ウイメンズが“ダッドジーン(DAD JEAN)”の2型で、価格はいずれも7150円(税込み)。今後も型番を増やしていく考え。
ZOZOはZOZOスーツで蓄積した約100万人分のビッグデータをテナントであるアパレルやSPAブランドに提供し、「ゾゾタウン」で従来のSMLサイズではなく、20〜50サイズ展開をするマルチサイズ事業を強化している。ジーンズはPBで最も販売が好調だったアイテムの一つだ。「リーバイス」とのコラボレーションは、どんな意義があるのか。キーマンであるリーバイ・ストラウス ジャパンのパスカル・センコフ社長とZOZOの伊藤正裕取締役COO(最高執行責任者)に直撃した。
WWD:いつから準備を?
伊藤正裕(以下、伊藤):1年前に、前澤(友作ZOZO創業者)さんと一緒にリーバイスジャパンを訪れ、話をしてきた。PB「ZOZO」は、PB事業の、というより「ゾゾタウン」でも史上最高にヒットしたアイテムの一つ。PB撤退を決めたタイミングで、こちらから「リーバイス」に持ちかけた形だ。「リーバイス」とのパートナーシップはそれ以上のヒットになることは分かっていた。
WWD:PBからは全面的に撤退する?
伊藤:その通りだ。現在販売しているアイテムの追加生産はすでに止めている。
パスカル・センコフ(以下、センコフ):1年かかってしまったのは、商品開発のリードタイムのため。最初に聞いたときから、非常に面白い話だと思った。「リーバイス」にはジーンズ開発で165年もの歴史がある。一方でZOZOは日本市場のジオグラフィック(地政学的な)とデモグラフィックを融合したデータを持っている。これはいわば、全く新しいファッションとサイエンスの融合なのだ、と。
伊藤:身長と体重を入れるだけで、丈やパターンも含めてぴったりサイズの商品を提案できる。この出発点は、圧倒的なアドバンテージのあるリアル店舗での接客に追いつくための、オンラインならではの新しい接客でもある。「ゾゾタウン」も含め、オンライン通販は便利さばかりを追求してしまい、そのことが結果的に価格競争に陥るきっかけにもなっていた。従来のSMLに比べて、根拠のあるデータから導き出したサイズ展開を提案できるこのMSP事業は、“ぴったり”というバリューを追求する、ZOZOならではの新しいビジネスモデルの挑戦だ。
WWD:ZOZOはデータを提供し、膨大なサイズをそろえるため、「リーバイス」側の在庫リスクが大きいのでは?
センコフ:在庫リスクに関してはほとんど心配していない。ZOZOからはそうした部分も含めたデータの提供を受けているからだ。われわれはこのプロジェクトの立ち上がりは、ある種の日本市場とこれまで弱かったオンライン通販へのスタディのようにも考えており、むしろ不安は購入者側の期待値が大きすぎてしまうことだ。
WWD:一方でZOZOも、マスカスタマイズ分野ではジーンズも含め、かなりのノウハウをPB生産で蓄積してきた。完全に撤退するのか?
伊藤:このプロジェクトは、MSP事業としては最大のもの。かなりのヒットだったジーンズのPBだが、それはあくまで“ぴったり”にそれだけのバリューがあったに過ぎない。「リーバイス」との取り組みを通して、モノ作りはやはりメーカー側、ブランド側が圧倒的に強い、それが今さらのように痛感した。「リーバイス」との取り組みも、「512」「DAD」はあくまで始まりに過ぎず、新たな製品での準備も進めている。