ジーンズブランドの「ヤヌーク(YANUK)」などを扱うカイタックインターナショナルをはじめ、繊維総合商社のカイタックトレーディング、総合アパレルメーカーのカイタックファミリーなどからなるカイタックホールディングス(岡山県、貝畑雅二代表取締役会長兼社長)は4月28日、福岡市にエリア最大規模となる4階建ての複合施設「カイタック スクエア ガーデン(CAITAC SQUARE GARDEN)」(福岡県福岡市中央区警固1丁目)を開業する。敷地面積は約8000平方メートルで、19のテナントが入る。福岡で陣頭指揮を執る、カイタックホールディングスの中原伸広アキアゴーラカンパニー社長に話を聞いた。
WWD:「ヤヌーク」などのブランドビジネスを主とするカイタックホールディングスは本来店子(たなこ)だが、それが大家となる。博打(ばくち)とも言えるのでは?
中原伸広アキアゴーラカンパニー社長(以下、中原):英断と言ってほしい(笑)。ひとえに貝畑(雅二カイタックホールディングス代表取締役会長兼社長)の英断によるものだ。
WWD:九州の商圏をよく知る中原社長がいたからこそできたのでは?
中原:私のことはともかく、商圏として活気の残る“福岡だからできた”ことは事実だ。ただし福岡の地代は年々上がっており、今や東京や大阪と変わらない。
WWD:つまり、それなりの投資になった?
中原:数十億円規模のビジネスだ。カイタックホールディングスの売り上げは700億円超なので指摘の通り、それなりの投資となる。
WWD:そもそも、なぜ大家になろうとしたのか?
中原:私が社長を務めるアキアゴーラカンパニーは、九州(を中心に西日本エリア)におけるカイタックホールディングスの小売り部門を担当している。東京や大阪と比べて、九州では郊外のショッピングセンターに店子が集まりにくい実状がある。そこでわれわれが出店する際には、同業他社に声を掛けていた。つまり皆が顔見知りであり、これまでの方法をもとに、たまたまカイタックホールディングスが“親”となったのが今回のケースだ。
WWD:アキアゴーラカンパニーは、2019年4月にオープンしたビオトープ(BIOTOP)福岡やロンハーマン(RON HERMAN)福岡店の出店にも尽力したと聞いた。
中原:土地と建物の準備は当社が行った。“セミ・デベロッパー”的立ち位置だ。
WWD:そういったノウハウが「カイタック スクエア ガーデン」にも生きた?
中原:そう言えるだろう。ほかにもアキアゴーラカンパニーは、フランフラン(FRANCFRANC)などと協業して“アキアゴーラペヂードグランチ”の屋号で九州でファッション&雑貨店4店舗を運営している。ここで培った経験も役立った。
WWD:19のテナントの決定はスムーズだった?
中原:とんでもない(笑)!これも東京や大阪と異なり、九州では販売員の確保も難しい。だから「カイタック スクエア ガーデン」では、テナントに「店休日はバラバラでよい」と伝えている。営業時間も11~19時半が主で、これだとワンシフトで回るため現場・運営ともに負荷が少ない。
WWD:リーシングは中原社長自らが担当した?
中原:そうだ。「カイタック スクエア ガーデン」の建つ警固(けご)は“これから”のエリアであり、博多や天神・大名とは異なる。店子としては恐さもあるだろう。だから丁寧にプレゼンした。結果として、福岡在住の若手経営者たちが賛同してくれた。彼らのコミュニティーをもとに、「カイタック スクエア ガーデン」が新たな“場”となることを期待している。
WWD:「カイタック スクエア ガーデン」のオープンによって、カイタックホールディングスが得られるものとは?
中原:長期ビジネスのノウハウだ。MDを変えつつ、地域に寄り添っていきたい。われわれにはブランドの開発力、卸の実績、小売りの経験がある。それらは全て「カイタック スクエア ガーデン」の運営に役立つ。
WWD:「カイタック スクエア ガーデン」の、既存の複合施設にはない特別性とは?
中原:パートナーシップを結ぶイベント制作会社セブンセンスの存在だろう。吉田拓巳社長は15歳で起業し、現在24歳。オフィスが別棟に入り、彼らが運営する九州最大規模のイベントスペース「ワスク」が本館2階にオープンする。ワスクは若い出店者のコミュニティースペースともなるだろうし、セブンセンスには「カイタック スクエア ガーデン」のスーパーバイザーでいてほしい。