津森千里が手掛けるウィメンズブランド「ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)」は、2020-21年秋冬物の受注会を伊勢丹オンラインストア上で行う。期間は2月28日10時から3月2日10時まで。同ブランドは19年春夏でエイ・ネットのもとでの生産・販売を終了しており、20年春夏からは津森自身のデザイン事務所ティー・シーでブランド運営している。ティー・シーでも以前の顧客を招いて受注会は行っているが、今回はかつて直営店を出店していた三越伊勢丹のブランドファンにアピール。伊勢丹オンラインストアがこのような受注会を行うのは初めてだという。
「受注生産体制で、商品を本当にほしいと思ってくださるお客さまにだけ届けるので、サステナブルで無駄もない。(エイ・ネットと離れたことで)どういうわけか時代の最先端な仕事の進め方になった(笑)。私は本当に服や生地を作ることが好き。好きなことができて、機屋さんや縫製工場の方の顔も見える。そんなフェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションやモノ作りを大切にしていきたい」と津森。
受注生産にし、顧客と直接コミュニケーションを取ってその声を企画に反映していくという手法は、駆け出しのD2Cブランドなどとも共通するもの。そうした手法を採るようになったことで、気付いたこともあるという。「うちの顧客は本当に柄物とワンピースが好き。元々、そうした傾向はあったが、改めて実感した」と津森。伊勢丹オンラインストアに先行してティー・シーで行った20-21年秋冬物受注会の集計に、それが如実に表れたという。また、香港やロシアでは、フランチャイズでオンリーショップの運営を続けており、台湾のセレクトショップにもコーナーがある。「店があるので、(柄物アイテムとのコーディネート用に)無地のボトムスなども企画しているが、集計してみるとうちのブランドに求められるのはそこではない」と実感したという。
そうした事情もあり、伊勢丹オンラインストアの受注では、型数を企画数の約半量である約70に絞り込んだ。型数を絞り込むことで、一型あたりの生産枚数を増やし、縫製工場の負担も減らす。
三越伊勢丹は、19年4月に新宿に“ささげ”作業用の「イセタン スタジオ」を設けるなど、デジタルの仕組みを整えてきた。それもあって、今回伊勢丹オンラインストアでの受注受け付けが可能になった。ただし、「『イセタン スタジオ』は基本的に伊勢丹新宿本店の店頭商品の撮影が優先。『ツモリチサト』はファンが多いブランドなので、受注会用に撮影レーンを押さえることができた」と川名部敬介・三越伊勢丹新宿婦人営業部4階婦人服バイヤーは話す。今後、同様の受注イベントの具体的な予定はないというが、「個人的には、受注生産はサステナビリティの潮流とも紐づいているし、拡大していきたい」という。
「ツモリチサト」は香港などにフランチャイズ店舗があるため、その生産ロットに同乗する形で受注会オーダー分の生産もスムーズに行える。「(そうしたまとまった生産ロットが期待できない)小規模なブランドだと、受注会もクラウドファンディングとみたいに、受注額が一定に達しないと生産ができないという形になる。そこはネックだが、新進ブランドなどに受注の形で販売のプラットフォームを将来的に提供できれば」と川名部バイヤー。伊勢丹オンラインストアでの受注に加え、三越伊勢丹の一部の客に向けては2日間の試着受注会も行う。